桜が満開になったことも、春の甲子園が始まったことにも

断るまでもなく毎度私事ですが、忙しさ、いや人気のピークがいよいよ落ち着き始めました。この後に書く原稿を仕上げれば、ひとまず締め切りの連続から解放されます。
他の同業者がどうやっているかはわからないのですが、僕の場合、取材時には手書きのメモを取ります。それを見返しながら赤ペンで要点をまとめて、書くべき内容を整理してからPCに向かいます。そして当然のことながら、取材が増えればそのメモが溜まっていき、見返す時間が取れないまま手つかず状態となる、いわば仕事の残高が嵩んでいきます。
それだけ仕事をいただけるのは有難いことです。下世話なことを言えば、仕事の残高はやがて預金の残高に代わりますから、多ければ多いほどいいに決まっています。
ただ、極めて贅沢な話をさせてもらえば、仕事の残高は精神的なプレッシャーも膨張させていきます。そういうものを抑え込んでこそプロフェッショナルという自覚はあるものの、締め切りに追われるまま次から次にやっつけていくような雑さに侵食されないか、今度はそれが気になり出します。力量はさておき、雑な仕上がりは避けなければなりません。何より目の前の1本の原稿は、次回の依頼につながりますから。
では、どうやって乗り越えていくか。綿密なスケジュールを立て、ひたすら1本に集中していく。分業が叶わない仕事ですから、そのパターンをひたすら続けていく他にありません。そういうとき、僕は自分に向けてこう問いかけます。果てしなく暇だった頃を思い出せと。よほど不安だったんでしょうね。この問いかけは呪文のようによく効きます。
そんなふうな日々を過ごしていると、瞬く間に月日は過ぎ去り、桜が満開になったことも、春の甲子園が始まったことにも気づけなくなります。それはだいぶ残念だなあと。いや、違うな。それでもどうにかして余裕を捻出できる精神的タフさが、僕にはまだ足りないのかもしれない。
昨日の午後の雨上がり。ふとベランダから空をのぞいたら虹がかかっていました。数分で消えてしまう小さな奇跡を発見できたことがうれしかったです。部屋からではなく散歩中だったらもっとうれしかっただろうとか、そういうことは言わないでおきます。

こちら、正直者には見えるという昨日の午後の虹。だいぶ低いところで弧を描いていた。

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