拝啓 エリック・クラプトン様

今日は78回目の誕生日ですね。おめでとうございます。ご本人にとってはまったくもって大きなお世話でしょうが、今でもステージに立たれていること、尊敬という言葉では言い表せません。勇気をいただくというのも有体の常套句で気が引けますが、とにかく年若としては「まだまだやれるんだ」という生きる希望を勝手に授かっている次第です。
思い起こせば、私がクラプトン様――まどろっこしい呼び方なので、失礼承知でエリックさんとさせていただきますが――を意識したのは、かの有名な1992年のMTVアンプラグドでした。もちろんそれ以前から、世界三大ギタリストに挙げられるエリックさんの存在は知っていましたし、ヒット曲のほとんどは耳にしておりました。ですが、あなたが本格的なプロ活動を始められた60年代の私はまだ子供でしたし、また70年代以降の活躍に関しても、未成熟だった自分の感性では理解できずにいました。
90年代に入り、MTVアンプラグドでようやく響くようになったのは、取りも直さず自分が好きなアコースティックギターを抱えておられたからです。その当時はエリックさんのファンの間で、そのアンプラグドが一種の分水嶺になりました。要するに、それ以前と以後でファンの質が量られたのです。「アコギのクラプトンファンはにわかだ」というような感じで。とは言え、その分水嶺をまたいでからファンになったとしても31年目ですから、今さら何をか言わんや、ですけれど。
そして、件のアンプラグドから10年目の2002年。高校時代から憧れていたマーティン・ギターを40歳でついに手に入れるのですが、選んだモデルがエリックさんのシグネチャーモデルでした。これまた失礼千万な話ですが、エリックさんのファンだったから選んだわけではなかったのです。そのルックスやスペックが、当時の自分に激しくヒットした。ただそれだけなのですが、20年が経ち、いい感じでやれてきて、これを手にしてよかったと心から思っています。
4月には4年ぶりに来日されますね。こちらでは、「海外アーティスト初の武道館100回公演」という記録が謳い文句になっておりますが、エリックさんにとってはそれほど意味を感じておられないでしょう。あるいは10年以上前、最後のワールドツアーと銘打たれた際の日本公演チケットを手にするも、仕事で行けなくなりひどく落ち込んだ後でも何度も来日され、いささか裏切られたような気持になったことも、ご本人には何も関係ありません。いずれにしても、今回の武道館もうかがいます。もはや神仏に参拝するような心持で。
それまでは、いやそれ以降も、ぜひお元気でお過ごしください。あなたの視野に入らずとも、お会いできるのを心から楽しみにしております。   敬具

20年前に買ったギター、エリックさんのサイン入りです。

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