その85/渋谷呑んべい横丁、『鳥重』の「生混ぜて」

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夏がくれば思い出す♩ のは、遥かな尾瀬?
僕の場合は、渋谷呑んべい横丁の中通りだ。
暑い日々が続く程、美味しくなる食材。
それが滅多にお目にかかれない白レバー、
『鳥重』で「生」と呼ばれる驚愕の逸品だ。
ちなみにササミと半々は「混ぜて」になる。
フォアグラを上品にしたような味と食感。
通常は数切れがありがたく盛られるが、
鳥重ではご覧の通り、小鉢てんこもりだ。

その昔は来る日も来る日も覗いていた。
まだ今のような3回交代制になる前で、
客はほぼ常連だけ、それでも大混雑。
お母さんのソプラノの声を聞きながら、
みんなお行儀よく、ぬる燗やビールで、
焼鳥屋の常識を覆す『鳥重』の滋味に酔った。
近年、少しだけ足が遠のいているのは、
昔より食が細くなってしまったからだ。

今だと串で1本か、2本がいいところ、
後は、実は少々じゃない「生少々」と、
〆に出されるおいしい糠漬けで大満足。
だから、「固いモツ」=ハツにするか、
「柔らかいモツ」=レバーにするか、
いつも迷いながら、もう1本にも悩む。
合鴨のジューシーで甘い脂に酔うか、
素朴でおいしい特大のツクネにするか?

ハツは普通、3個から4個を開いて出すが、
ここんちでは、ほぼ1ダース分が刺される。
ツクネはお弁当のハンバーグよりも大きい。
塩とタレを迷っていると「両方ねっ!」と、
器用に半々ずつの味付けにもしてくれる。
とにかく大きい串は、鳥用ではなく鰻用。
だから、一人の許容量は3本が限度。
4本を平気で平らげられたら余程の健啖家、
それ以上はギャル曽根級の胃袋の持ち主だ。


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常連が持ち込み、定番となった柚子胡椒。
生姜に大蒜、七味、胡麻油と塩の名コンビ。
薬味や味付けも、好みで食べられる「生」。
大根おろしに始まり、〆のスープで終わる。
『鳥重』の至福の時間は、お母さんの一人舞台。
決してここでしか味わえない渋谷の奇跡だ。
旨い焼鳥とお母さんの名調子に酔いながら、
いよいよ今夜のお勘定の時間になると、
お母さんが告げる金額に軽い目眩を覚える。
そして、きっと誰もがこう言うだろう。
「お母さん、また来てもいいですか…」


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