その8/美しが丘あたり、『和楽』のミンク鯨フライ

温厚そうな森さん、今日は怒ってます。
きっかけは海外の新聞記事。
「捕鯨」に向けて、かなり長文です。

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最近、森さんも丸くなったねぇ、とか言われる。
確かに頑固ジジイになるかと思いきや、そうでもない。
しかし、怒るときは怒る! 最近の怒りは豪州ネタだ。

[以下、新聞記事引用]
オーストラリアの在パース日本総領事館によると、
豪北西部の真珠生産で有名なブルーム市で5日夜、
日本人墓地が何者かに荒らされ、墓石118基が押し倒された。
同市は捕鯨で知られる和歌山県太地町と姉妹都市を結んでおり、
今月1日から10日まで記念行事が催されている。
この期間中、環境保護グループが市内で日本の捕鯨に対し
抗議行動を行っており、地元報道はその関連性を指摘している。 

なんだとー!ふざけるな、オージー!
「グッダイ・トゥダイ」なんてなまってる場合じゃないぞ!
この記事には頭の血管がビンビンになり、今に至っている。

我が田舎、玄界灘に面している唐津の街は、
その昔は捕鯨の街として知られていた。
ちっぽけな唐津湾にでっかい鯨を追い込んでは、
たくさんの漁師さんたちが銛を打ち、鯨を捕獲した。
鯨は唐津の港で解体され、捨てる所なく利用され、
尊敬と畏敬、感謝の気持ちを込めて、丁寧に葬られた。

長い間、唐津の名物は松浦漬という鯨軟骨の粕漬けだった。
レトロな捕鯨の缶詰は食卓に欠かせない大切な常備菜。
しかし、あるときから品質が低下した偽物が横行。
それは軟骨の代わりに大根を使用した粗悪品だった。

なぜか? もちろん、捕鯨が禁止されてしまったからだ。
もともと、油だけ取ったら鯨まるごと捨ててた白人たちが、
鯨やイルカは高等動物だと愛護保護に乗り出した。
彼らは頭がいいから、食っちゃいけない?
ほーっ、牛や豚は頭悪いから、食っていいわけかい?
牛肉を禁止されたら、白人たちは生きていけるのだろうか?

僕が高校の頃、唐津からフェリーで行く壱岐・対馬で、
大量のイルカが撲殺され、イギリスの新聞に報道された。
瞬く間に九州人は世界に名だたる野蛮人に祭り上げられる。
しかし、泣く泣くイルカを殴っていた漁師の気持ちを
血のしたたるステーキ好きの奴らは、誰も知らない。

確かにイルカは可愛い。誰だって可愛いと思うに決まっている。
しかも、あの虐められッ子みたいなか細い声と仕草。
そんなものを平気で殺してしまえる奴なんていない。
しかし、漁だけが命綱の壱岐の人たちの生きる支え、
イルカにも漁師にも、平等に与えられているはずの、
玄界灘の海の幸を、すべてイルカが横取りしてしまう。

頭がいいということは、時々、残酷なことである。
どんな仕掛けも、どんな工夫も、イルカには無駄だった。
可愛いはずのイルカは、憎らしい海の悪魔に変わった。
そんな事情も知らず、批判だけするのは簡単だ。
おーっと、いけねぇ、鯨を食う話題だった。
ここで、もひとつ、今度は友人の文を引用したい。

我が尊敬する友、猪口ゆみ嬢は美人にして才気バシバシ。
セコムの食という素晴らしいサイトを切り盛りしている。
そんな彼女が、千葉・和田で鯨の解体に立ち合うことになる。
近くで見学する子供たちが気になっていると社長が言う。

[以下、記事引用]
「動物の解体の現場はグロテスクだから、多くの場合みんな
隠そうとする。でも、魚が蒲鉾板に乗って泳いでいると
思っているような子供がいる世の中は、絶対におかしい。
ウチがクジラの解体を公開しているのは、食べ物はすべて
他の生物の命をもらったものなんだということを
伝えたいからなんだよね」
この日の子供たちの顔を見る限り、社長さんの思いは、
きちんと伝わっているんだろうと思う。

そう、そう、そうだよ! さすが猪口女史、いいこと言うなぁ。
そう思いながら僕は、自宅からいちばん近い名店に電話。
『和楽』は、帝国ホテルに勤めてたタケちゃんの「居酒屋」。
さっそく、ミンク鯨を揚げてくれるとの嬉しい声。
鯨さん、ありがとう! そう思いながら口に運ぶ。
懐かしい匂いと味が、五臓六腑に沁み渡っていく。

しかし、やっぱり調査捕鯨のミンク鯨は大したことない。
もちろん、タケちゃんの腕のせいではない、材料の問題だ。
たまプラーザの名店『和楽』の真骨頂はまたの日に譲って、
ひとまず今日は、怒りの鯨談義に幕を引こうと思う。
タケちゃん、今度ゆっくり、フレンチなアテの話しするね。

木を見て森を語らず、ということなのかな。それぞれの違いを認めなきゃ、ということかもしれませんね。食と命、よく考えなきゃいけないと思いました。(T.T.)


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