その33/千石通りあたり、『たまる』の「ワンセット」
“見知らぬ街・はじめてのアテ”シリーズ(?)
第2弾はまたまた長野から。
桃色サインを目印にすると、良いアテが見つかるそうな。
知らない街の駅を降りたら、ぶらぶらと紅い看板を探す。
だいたいはサロンとか、亜細亜美人の方々のマッサージ……。
別に見知らぬ街で欲情しているわけでは、もちろん、ない。
いい感じの横町は、地方ではだいたい桃色系と混在している。
「伊勢は津で持つ、津は伊勢で持つ」とは、ちと趣が違うが、
まあ、人間の煩悩を満たすものは一箇所にまとまりやすい。
長野駅前の大通りと、もう一本先の中央通りの途中あたり。
妙に細い道がくねくねと曲がりながら、もつれあっている。
整備されていない路地は、昔ながらの町、まず間違いない。
すると、あった、あった、懐かしき「立ち呑み」の文字が!
よーく見ると、昼間はラーメン屋らしい、おもしろそうだ。
長いカウンターにおでん鍋と、ラーメン用の寸胴が並ぶ。
「ワンセットねっ!」客は、みんな同じものを頼んでいる。
それもそのはず、おつまみ3品に中生か、升酒で300円だ!
しかも、酒はちゃんと吉乃川の升酒、しかも正一合、塩付き。
真ん中の乾きものの封を開けず、お土産にする人もいる。
で、2杯目はまたみんな同じ注文「たまる酒ある、まだ?」
試しに頼むとメーカー直送のノーラベルの大吟醸が正一合!
で、値段といえば、一日10杯限定ながら、200円ぽっきり。
「この前さ、なんかのページにおでん出てたよ、白かった」
客がそう言ったとたん、無口だったマスターが喋り始める。
どうやら、おでんの黒さについて強いこだわりがあるらしい。
よしっ! 旅人の僕には黒いおでんを正確に紹介する使命がある。
とにかく黒い、しかし、しょっぱくはない、さっぱりと旨い。
長野の醤油はもともと色が濃いのだろうか、それにしても黒い。
トロトロ半熟卵は昼間のラーメンの副産物、なるほどねっ。
そろそろ、待ち人が長野駅に着く時間だ、頬がポッと紅くなる。
恥ずかしさなのか、単に日本酒の酔いがまわってきたのか……。
「ワンセット」と「たまる酒」、そして、さらにもう一杯。
正三合飲めば、酔うのは当たりまえだ、訳もなく顔がほころぶ。
ここまでで、お勘定はまだ、アンダー千円をキープしている。
渋谷のんべい横町では、2杯目だって飲めない金額だぁ。
長野はいいっ! 酒も女も長野が一番! いかん、酔っぱらってきた。
「酒と女の一番」は、たぶんそのうち他の土地でも使われるフレーズだと思われます。更新してこそのアテですからねぇ。(T.T.)

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。