その37/沖縄県警ど真ん前あたり、『さんべ』の「牛たたき」

モリさんにもようやく見つけられた
馴染みの寿司屋。その場所はなんと沖縄!?
例によってアテのためならどこへでも飛びます。


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いいトシした男なら誰しも、馴染みの寿司屋を持っているだろう。
ちょいとつまんで、お酒を何本か飲んで、軽ーく握ってもらう。
しかし、残念ながら僕には長い間、そんな寿司屋は存在しなかった。
まず、寿司屋に通い詰めるほどの財力がないという原因も大きい。
寿司屋で寿司を食わず、女子をはべらせてる奴らが大嫌いだ!
という理由も大きい。寿司にはでっかい湯呑みのお茶がいちばん!
そう信じて疑わない、という古風な持論も影響しているだろう。

そんな僕に、数年前のこと、馴染みの寿司屋が出来てしまった。
オヤジが面白く、酒も、刺身も、寿司も、つまみも、何でも旨い。
ただひとつの難点といえば、家からも事務所からも遠いことだ。
まずはリムジンバスか、京急か、モノレールあたりで羽田へ。
その後、2時間以上も機上の人となり、着いたら「ゆいレール」
県庁前の駅に着いたら、足早に紫色の看板の元へひた走る。
生まれて初めての(江戸前!)寿司屋は沖縄県那覇市にあるからだ。

『さんべ』の大将は僕と同い年、初めて友だちになったウチナンチュ。
彼の存在がなかったら、僕は沖縄の魅力を知ることはなかったろう。
糸満で生まれ、上方で修行し、那覇の一等地に店を開いた大将。
彼の握る江戸前寿司は、どんな江戸っ子よりも繊細で美しい。
江戸前と言っても、関西で修行しているため、シンプルな握りだ。
その分、材料の新鮮さと、沖縄という土地ならではの味が活きる。

海をその身に抱いたようなシャコ貝の美味しさも、県産の雲丹も、
生き生きとした緑がまぶしい、プリプリの海ブドウの真価も、
みんな大将の手から、面白過ぎる話しと共に飛び込んで来た。
名だたる石垣牛は軽く表面を炙り、石垣産のタイフーンをぱらり。
県産の塩とハーブで作られたタイフーンは石垣島特産の調味料。
大ヒットした石垣ラー油に続いて、ブレイク必至の銘品である。
そうこうしている内に、とんでもないものが目の前に現れた。


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なんと120年前の泡盛、銘柄不明の古酒(クース)の登場である。
ちっちゃな古酒用のおちょこにのせ、舌へ! 瞬間で香り立ち、
そのまま空気中に消え、旨味だけが口元に残り余韻を奏でる。
優れた酒に共通する黄金色と、ブランデーのような口あたり。
すっと入って行くのに、どこかで強烈な酔いを呼び起こす……。
ウチナンチュの大将さえ初めてだという120年ものを真ん中に、
いつも竜宮城の出来事のように過ぎて行く沖縄の夜が始まる。

チープこそが醍醐味のアテだけど、それを求める距離は果てしなく、やはりモリさんの嗜好は贅沢なのだと思い知るのですよ。(T.T.)


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