その45/コラート1号線あたり、『ロンブン・ガイヤーン』の「ソムタム」
今回もタイでアテ探し。
辛さで有名なタイ料理のなかでも、
あえて現地バージョンを選ぶあたりがさすがです。
タイでは生まれた子供には、親が必ずニックネームをつける。
そして生涯、本名よりはニックネームで呼ばれることが多い。
ドゥアンは月、母親は色白で聡明な女のコになるようにと願い、
タイ語の「月」を、子供のニックネームに選んだのだろう。
僕の目の前で、次から次へと生のプリッキーヌをつまんで、
無造作に口の中に放り込むドゥアン、小さな緑の唐辛子と、
パープルがかった紅色の唇と、褐色の肌がシェイクする。
バンコクから東北地方へ約250キロ、バスなら3時間余りで、
ナコーン・ラーチャシーマー、通称コラートという街に着く。
東北部イサーンへの入り口、カオヤイの山に抱かれている。
イサーンと言えばソムタム、青いパパイヤのサラダだ。
辛いタイ料理の中でも、いちばん辛いもののひとつがソムタム。
さっぱりとした清冽な辛さの故郷で、本場の味を注文する。
が、ソムタムは2種類あるらしい、現地用とバンコクの辛さ。
そこはどうしても、本当の味に触れたくて現地用にすると、
心配そうにドゥアンが眉をしかめてみせる、大丈夫だって……。
果たして、運ばれて来たものは青い菜っ葉と茎の盛り合わせ。
九州訛りとチェンマイ訛り、片言の英語でコミュニケーション。
これから来る本場ソムタムの口直し、辛さ直しだと分かる。
やがてやって来た本場のソムタムは想像以上に美しい。
千切りのソムタムのほかに、無造作に挿入された柑橘類。
さまざまな辛いハーブ類、トマトの赤ものぞいている。
一口食べる、爽やかで辛く、酸っぱく、甘く、ジューシー。
とたんに、顔の汗腺、頭の毛穴のすべてから湯気が立つ。
いつのまにか顔が汗と涙でぐちゃぐちゃになる、が、旨い。
観光客のために一切アレンジされていない本場の味わい。
イサーンへ向かうドライバーたちが車を停め、立ち寄る、
巨大なドライブインみたいな店先は、オープンエアー。
遥か上のほうに屋根はあるものの、壁などは一切ない潔さ。
口直しの菜っ葉や、どう考えても単なる木の枝なのに、
妙に後を引くハーブの類いを口に入れると、あらま不思議、
本当に辛さがサーッと消えて行き、口が生き返る心地。
そこにまた、一から辛さの洗礼をぶち込んで行く快感。
その横で、汗ひとつ見せることもなく座る褐色の少女。
次から次に齧るブリッキーヌは、世界一辛い唐辛子だ。
もうすぐ店の名前になっているタイ風焼き鳥が登場する。
シャモの語源はシャム、ガイヤーンもここから生まれた。
(焼き鳥と揚げ豚の極めつけは、いよいよ次回へ!)
でね、モリさん。できたらドゥアンちゃんの写真も見たいんですよねぇ……。(T.T.)

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。