その55/曳舟酎ハイ街道沿い、『岩金酒場』の「ウインナー炒め」

誰が名付けた、酎ハイ街道。
アテ満載の香り漂う京成線沿線で、
下町インディーズの桃源郷に酔うのでした。


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恋愛におけるプラトニックは、欲望の怠惰である。
そんな名言が誰よりも似合う同輩と夕方に出会った。
打ち合わせは早々と午後4時前に終わり、場所は大門。
2人は無言で顔を見合わせ、にんまりと微笑み、
一路、浅草線の車上の人となった、荒川越えである。
この一年間、酒友コニタンは甚だしく京成づいている。
もはや、どんな女人よりも「宇ち多゛」をご贔屓だ。

そんな京成野郎と久々サシの下町飲み、しかも立石。
谷中・浅草にゃあ強いオイラも、その先はまっくら。
ここはひとつ、ガタイのいい文科系、コニ様に従おう。
一軒目は無論「宇ち多゛」、その感動はまたの話にして、
生まれて初めての酎ハイ街道、立石~八広~曳舟の
炭酸が迸るゴールデン・トライアングル・デビュー也。
しかし、2軒目、八広の「丸好酒場」は閉店日だった。
コニ様は迷わず街道をスタスタと行軍している。

あたりは人の輪郭がぼんやりとしてくる夕まぐれ。
だんだん人影も消え、取り壊された住居が目立つ。
そんな中、蔦が絡む一軒家がポツンと出現した。
おおーっ、これこそ名店の誉れ高き『岩金酒場』か!
迷わず、カウンターの中央辺りに腰をおろす。
食器棚はメニューを書いた紙で覆い尽くされている。
迷っていると、横から「ポテサラください!」のひと言。
さすがコニさま、京成飲みに慣れていらっしゃる。


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岩金の姉妹は常連も新参者も分け隔てなく優しい。
薄いニットがお似合いの妹さんは淡い色香で、
女は灰になるまで、の現役感を漂わせている。
だからこそ、下町の爺様たちが大人しく飲む。
灰ボール、いやハイボールは文句なくうまい。
下町で言うハイボールとは、ウイスキーではない。
焼酎に店オリジナルのブレンドをした原液を、
氷なしで、そのまま一本の炭酸を逆さにして割る。
この炭酸も、炭酸強めの下町インディーズである。

京成が誇る酎ハイ街道は、どの店も独自のブレンド。
ハシゴしながら飲み歩いても飽きず、しかも安旨、
何軒か廻っても、懐にも、ハートにも優しい。
しかも、必ずアテが豊富で、どれもおいしい。
これじゃ、恵比寿のヨンさまが毎週通い詰めるはず。
遅れて来た酔っぱらいその弐も忽ちファンに仲間入り。
メニューにウインナーの文字を見つけ、早速注文。
ピーマンと炒められたお敵は、期待通りの赤い顔!
もう、なんにも言うことないっす、脱帽ですわい。

その後、新橋~渋谷と、勝手に酎ハイ街道を伸ばし、
2人は正体なく酔い、すべての煩悩を征して、
睡眠という桃源郷へと静かに身を埋めた、とほっ。

ウインナーにポテサラ。誰がなんと言おうと間違いなし。(T.T.)


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