その77/人見講堂はす向かいあたり、『和正』の「三点盛り」

九州人は、つくづく不思議な生き物だと思う。
一対一とかで会ったりすると、県別に罵り合う。
「わっ!?佐賀や!?」「なんね!?宮崎ぃ!?」
お互いの県の欠点を、重箱の隅的に指摘し合う。
ところが、本州や四国、北海道の人と会うと、
一転して、今度は「九州人」という同県人になる。
まぁ、仲のいい男女の痴話喧嘩の類いだろうか。
そんな九州人が好むと思われがちなのが、
いわゆるコテコテの豚骨ラーメンである。
ま、確かに美味しい店はあるのだが…。
西荻窪の『はつね』とか、三鷹『江ぐち』とか、
最初に東京ならではの支那そばを食べたとき、
強烈に感動した、初めてなのに懐かしい味。
それからは、和風な味わいの中華麺に惹かれる。
三軒茶屋、人見講堂がある昭和女子大の前、
道路に高速道路が蓋をしたはす向かいに、
いつも香り高い煮干しの匂いをさせている、
小奇麗で、こじんまりした中華麺屋がある。
黙々と調理する寡黙な店主と可愛いおかみさん。
まじめで実直なご夫婦の印象そのままの、
誠実で、滋味溢れる中華麺は魚系の理想型だ。
この手の麺としては最大級に太い麺を使うため、
アルデンテに茹でるには15分程度時間がかかる。
だから、小瓶のビールと三点盛りでじっくり待つ。
三点盛りは、メンマ、チャーシュー、味玉子、
トッピング御三家をそのまま皿盛りしたものだ。
ちょっぴり葱がかけられているメンマ、
たっぷり2枚載せられている巨大チャーシュー。
そして、絶妙の色に魅せられる味玉子。
ラーメンに必要なものしか出さない、というか、
出せない、ことこそがラーメン屋の誇りだと思う。
スープはたっぷりの煮干しを使い、味は醤油のみ。
メニューもトッピングの種類と「盛り」方のみ。
中盛りで一玉半、大森ならたっぷり二玉を使う。
他にあるメニューが「つけ麺」と「三点盛り」。

優しく、美しく、気配り上手のおかみさんが、
ビールを頼むと、なんとお酌してくださる。
昼間のラーメン屋でお酌されると妙に照れる。
三点盛りの前に、ちっちゃなサービス・メンマ。
意外に多いアテで小瓶のビールを飲んでると、
うーん、少しだけメンマが残っているし、
えーい、中華麺到着前にもう一瓶行けるかっ!?
やがて、ほろ酔いの嗅覚に煮干しのパラダイス。
一気に引いて行く酔いの中で、麺をすすり込む。
幸せって、実はこんな近くにあったんだ…。

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。