今日のアテ/その90、浅草駅地下街あたり、『オーセンティック』の「ゴイ・ガー」

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最初にベトナムに夢中になったのは、映画だった。
ジャン・ジャック・ベネックスのデビュー作で、
主人公をかくまう不思議な万引き少女、アルバ。
いびつでセクシーな、小柄な身体も、顔も全部、
僕の好みそのまんま、フレンチなベトナム......。
最初にパリに行ったとき、ベトナム街を探した。
パリのベトナムは、13区の中華街に同化していた。

当時フランス領だった、ベトナムの地から、
戦火を逃れてフランスにやって来た華僑たちは、
中華とベトナムをかき混ぜ、メランジェした
独特の文化圏を、パリのど真ん中に持ち込んだ。
どことなくベトナム風の中華に混じって、
「マイラム」や「フォー14」といった、
有名なベトナム料理のお店がポツポツある。
すぐに僕は、パリのベトナム料理に恋した。

浅草松屋の地下に出現したピュアなハノイ、
『オーセンティック』の「ゴイ・ガー」を頬張った途端、
イタリア広場を曲がったパリの思い出が、
口の中から一気に身体中を駆け巡り始めた。
キャベツと蒸し鶏のゴイ、ニョクナムとパクチ、
パクチ好き、ベトナム好きを狂喜させる味わい。
店がある地下街も無国籍で、いい感じに汚く、
ベルヴィルやサンドニ辺りに迷い込んだ感じ。

フレンチを経てベトナムに惚れ込んだシェフが、
ノー・ケミカルで丹誠込めて作るベトナム料理。
浅草地下街への夜の再訪を強く心に誓いながら、
ベトナム・ワインをぐっと飲み干し、〆のご飯。
「豚挽肉のレモングラスそぼろご飯」を注文。
これがまた、立ち上がり叫びたくなるほどの旨さ。


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色鮮やかに盛り込まれたパクチとジャスミンライス。
サラサラしたジャスミンライスの美味しさに唸り、
独特の甘辛なベトナム・ワールドに引き込まれ、
休む間もなく、一気にかき込んでしまった。
近年、これほど丼をイッキ食いした経験は皆無。
浅草『オーセンティック』のベトナム料理は、
もしかしたら、かの本国よりも、パリよりも、
ずーっと美味しいに違いない、強く確信しながら、
次はいつ来ようか? と、そわそわしてしまう。
パリ経由浅草行きのベトナム料理は中毒性が強い。



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