今日のアテ/その91、中野昭和新道あたり、『味治』の「一人前」

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金環日食の朝、自由が丘に続く表通りに出ると、
いつもは話さない近所の人たちが集まっていた。
みんなパジャマ姿で、手には日食用の眼鏡。
大げさな望遠レンズを付けたカメラの人もいる。
そして、一心に空を見上げて歓声を共有する。

途中の猫じゃらし公園には数組のカップル、
運命の時を二人で静かに確かめ合っている。
津波に泣かされ、竜巻に脅かされながら、
今度は日食というサプライズで感動を貰った。
時には悲しみに震え、時には喜びながら、
人間たちはいつも、大自然に翻弄されている。

三期続いたシラスウナギの不漁~高騰でさえ、
ちっぽけな人間の浅知恵では、解決は不可能。
ブリやハマチ、牡蠣などと違い、鰻は謎の魚。
今も、誕生の地さえ突き止められてはいない。
だから、養殖と言っても稚魚を成育させるだけ。
完全な人工孵化が成功する可能性は極めて低い。

開店以来、千円で頑張ってきた『味治』の鰻丼は、
大将が頭を掻きながら、二百円だけ上がった。
でも、夏までに再値上げしなきゃ元が取れない。
事実、老舗の鰻屋が次々と歴史に幕を降ろした。
「一人前と、肝さしと、短冊の大蒜醤油、
あと、キャベツ大盛りとキンミヤください!
それと、〆の鰻丼、キープしといてください」


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とにかく、ひたすら食べて、大いに飲む...。
名店を守るためにできることは、それだけ。
飲んべえにできることなんて他愛もないが、
備長炭の小さな欠片ひとつ分にでもなれば、
大将の燗酒のアテ位にはなるかもしれない。
庶民の味方、鰻串焼きの最高峰、中野の『味治』。
伝説の川二郎店主自らが焼く、究極の進行形。
その味を修飾する言葉を、未だ僕は知らない。



それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。
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