その94/大井町仙台坂あたり、『その田』の「ひな鶏の素揚げ」

誠実さと味は、正しく比例するのかもしれない。
『その田』の料理や、酒、接客に向かい合う度に、
身も心も、静かで温かい想いに包まれてしまう。
そう感じる客は、決して僕一人ではないはずだ。
鹿児島出身ならではの、芋焼酎のラインナップ。
主役の鶏の素揚げがじっくりと揚げられる間には、
丁寧に作られたサイドメニューが待っている。


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まずは通常の木綿ではなく絹ごしを揚げた厚揚げ。
外はカリカリ、中は限りなくクリーミーな食感。
まさに揚げ立てならではの至福が口一杯に広がる。
その都度、丁寧に仕上げられるポテトサラダも、
鹿児島ならではのニガゴリ(ゴーヤ)のおひたしも、
優しい口当たりと食感の妙が焼酎の杯を進ませる。
名店『うえ山』経由で再現された鶏の素揚げは、
モモとムネそれぞれに鶏の美味しさが満ちている。

下味や衣に趣向を凝らす鶏の唐揚げに対して、
素揚げは素材そのもの、鶏本来の旨味が勝負。
本当の鶏好きなら、これ程の贅沢はないはずだ。
衣を纏わない分、油分の吸収が少ないから、
唐揚げよりヘルシー、塩分だって抑えめになる。
蒲田の名店『奈加川』で生まれた鶏の素揚げは、
再開発による地上げの嵐の中、鍋の火を落とす。
しかし、常連の一人が伝説の素揚げを蘇らせた。
新たな名店、蒲田『うえ山』の誕生である。

当時、芋焼酎の店を任せられていた園田氏は、
『うえ山』の味に惚れ込み、連日通い詰める。
素揚げのへの熱い思いで結ばれた友情は、
伝説に新たな1ページを加えることになった。
レシピから、材料の細かな入手先に至るまで、
上山氏は学んだもの全てを『その田』に継承。
素揚げの正統は、大井町で新たな産声を上げた。

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肝を抜いた丸々一羽分の鶏を背骨を真ん中に、
左右半分に切り分け、さらに上半身と下半身に。
だから、ムネには通常の手羽の部分が含まれ、
モモにはフライドチキンの主役の部分が相当。
両方を食べれば、ひな鶏を半羽分味わえる。
さっぱリとしながら、鶏の滋味に満ちたムネ。
脂がのり、こってりとした肉々しさが旨いモモ。
鶏の美味しさを無我夢中で頬張れる幸せが、
『その田』の店内いっぱいに広がっている。





それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。
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