その95/大井町JR根岸線線路沿い、『GATITO』の「ひよこ豆とチョリソ煮込」

大井町東口を抜けると、すぐにそこは東小路。
昭和の匂いと喧噪がそのままのラビリンスだ。
しかし、根岸線、京浜東北線沿いに歩き始めると、
大森に向かい、灯りがだんだん少なくなって行く。
もうお店なんてない、もと来た道を引き返そう...。
そんな酔っぱらいのセンチメンタリズムが、
毛穴の一つひとつから爆発しそうになる頃、
突然、眼前にテキーラのパラダイスが出現する。

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「ガティート」確かLAの路地で聞いた台詞だ。
テックスメックス系の太ったおばちゃんが、
小魚を手に、ちっちゃな子猫を呼んでいた。
100%竜舌蘭の良質なテキーラと旨過ぎるアテ。
ここのGATITOは一人で店を仕切るママのユカ、
出会った頃は、古い出版社のエディターだった。
少女の目と、年齢よりずっと大人びた妖艶な風情。
彼女の周りだけ、夜の空気が凛と透けて見えた。

スパイシーで辛いものと、純度の高いアルコール。
酒はいつもストレートか、ロック、基本は梯子。
愛用のバイクは、肉食獣の斑紋を纏っていた。
小説誌から女性誌へ、野生派作家のおもりから、
コスメやビューティ、ペット、占いや旅行へ。
そして、いつのまにかテキーラ屋の女主人。
カウンター上の黒板には夫のチョークアート。
上質なテキーラが驚くべきプライスで並ぶ。

映画ベティブルーの狂おしく堕ちて行く二人が、
炭酸を入れて、テーブルに叩きつけるシーン。
深い夜に繰り返される、愚者たちの一気飲み...。
テキーラを巡る中傷のすべてはここで払拭され、
いい加減な混ぜ物と加水で酒神を侮辱してきた、
大手メーカーの作り手たちは反省を促すだろう。
真のテキーラは限りなく豊穣なのに鋭く切れる。

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口に含むと、自分がグサーノになった気分。
竜舌蘭の葉の上に暮らす、あの芋虫の想いだ。
そこに、ローズマリー風味の豆と辛いチョリソ。
今度は氷なしのテキーラハイボールが欲しくなる。
ストレートの至福、ハイボールの優しい煽情。
ナチュラルの証しか、翌日には一切残らない。
だから、いくらでもテキーラの杯が並んで行く。
〆のメキシカンカレーまで辿り着けるだろうか...。






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