オール・ザ・キングスメン (0025本目)
ハリウッドの歌舞伎役者
今回の映画は『オール・ザ・キングスメン』。
原作は、実話をもとに執筆され1940年代にピュリッツァー賞を受賞した同名小説なのだそう。アメリカ・ルイジアナ州の知事選に「あて馬」として担ぎ出された名もない小役人のウィリー・スタークが、不正と汚職に不満を募らせた人心をつかみ、大方の予測に反して劇的な当選を果たす。
しかし、スタークは貧困にあえぐ民を救済する数々の政策を実現するものの、同時にそれまで忌み嫌っていたはずの「カネ」、「女」にまみれ堕落の一途をたどる、というのがメインのプロットだ。
そのウィリー・スタークを演じるのは誰あろう天下のショーン・ペン。演技派俳優としての才能はもう説明不要で、『ミスティック・リバー』、『アイ・アム・サム』、『デッドマン・ウォーキング』など映画評論家の賞賛を浴びた映画は数知れない。文字通り演技にかけては右に出る者がないといっても過言ではない地位を獲得しているショーン・ペンだが、近年の作品に関しては観るたびに何か引っかかるものがあった。「うまいんだけど、なんかこう」みたいなものだ。うまく言葉にできない。形をなさない靄のような感覚だ。または違和感と言い換えてもいいかもしれない。しかし『オール・ザ・キングスメン』を観ていてそのわだかまりが一つの疑問として結実した。(ってものすごい大げさだけど。)その疑問とは……。
この人、映画じゃなくて歌舞伎役者になったほうがいいんじゃないの?
「いきなり何を?」と思うむきもあるかもしれない。しかし映画というメディアはスクリーンという大画面で展開されるため、演技も大仰なものより繊細さが求められる。必要とあればズームアップすれば良いのだから、大げさなアクションは不要だ。
翻って歌舞伎はといえば、舞台の上で生身の人間が演ずるため演技もスケールの大きさが必要となる。そこでショーン・ペンはといえば、この映画でも抜群の演技なのだが、どうも後者に近い気がする。「どうだ、俺ってうまいだろう」というオーラが異常な熱気とともにスクリーンから押し寄せてくる。座席の上でのけぞってしまうくらいの勢いだ。それはもう歌舞伎役者のそれ以外の何者でもない。実際、ショーン・ペンの演技を観て、こう叫んでしまう観客もいるのではないだろうか?
「成田屋!!」
いやさすがにそれはないか。ないだろうな。なんで合の手なんだ、だいたい。成田屋は市川家の屋号だし。そんなことを劇場で叫ぼうものならすぐさま係員に追い出されるに違いない。マスコミ関係者ならば試写会から締め出されてしまうだろう。しかし人にそう言わせてしまいそうな何かがショーン・ペンには感じられるのだ。
この映画でも、ウィリー・スタークが選挙民を前に演説をうつシーンが何度も出てくるが、その姿は歌舞伎の口上を切っているようにしか見えない。そしてそのシーンを前に多くの人が心の中で思うはずだ。
「よぉー、成田屋!!」
4月7日(土)日比谷みゆき座など全国ロードショー。
公式ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/allthekingsmen/index.html

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つくっているのはこんなひとたちです。