ネクスト (0043本目)
あうん、の翻訳
今回の映画は『Next –ネクスト-』。主演はニコラス・ケイジだ。なぜか当コンテンツこれまで最多出場のニコラス・ケイジ。その理由は神のみぞ知るだが、なにはともあれ、今回の役どころは、ラスベガスでマジシャンとしてしがない日銭を稼ぐクリス・ジョンソンという男。
見るからに冴えないクリス君、しかし実はタダ者ではない(←まぁ、そうでないとストーリーにならないのだけれど)。なんと未来を見ることができるのだ。誰もが子供心に憧れたに違いない予知能力。そのクリスの特殊能力に目をつけたFBI捜査官(ジュリアン・ムーア)が、テロリストによってロス市内に仕掛けられた核爆弾の捜査にクリスの協力を求める、というのが基本のあらすじだ。
その途中でのある会話。クリスがその前までの展開に登場した女性にこう聞く。
「ホットドッグを注文した禅僧の話って聞いたことある?」
その女性が初耳である旨を告げると、こう続ける。
「全部って言ったんだ」
字幕を一字一句記憶しているわけではないが、大体そんな感じだった。禅僧の「ゼン」と、トッピングを全部の「ゼン」をかけた駄洒落交じりのギャグとして訳されていたのだが、ここで僕は困惑してしまった。というのもニコラス・ケイジが発した英語は以下のようだったからだ。
Did you hear about the zen monk who ordered a hot dog? He said he had one with everything
このセンテンスから明らかなように、禅僧→ホットドッグ→全部という流れは同じなのだが、そこに駄洒落の要素は微塵もない。しかしそれを聞いた女性は笑みをもらしたので、これが(少なくともニコラス・ケイジにとっては)ギャグなのだ。しかし、英語を見る限り何処で笑ったものかさっぱり分からない。この瞬間、僕の頭の中に無数のはてなマークが踊り、すっかり話の筋に集中できなくなってしまった。
「どこがオチなんだよ? 先に進む前に教えてくれよー」
あやうくスクリーンにそう叫びそうになってしまったが、しばらくして一筋の光が見えた。おそらくは禅僧というものは質素倹約を尊び、世俗のいかなる欲からも遊離しているはずの存在であるのに、「トッピングを全部」と言ってしまった欲深いこの僧の生臭ぶりを笑ったのだろう。しかしここでひとつの、しかし根本的な疑問が頭をもたげてきた。
「それってギャグとして面白いの?」
首を横に振るむきの方が多いのではないか。だいたい瞬間で理解できないギャグなんてギャグじゃない。それにくらべると字幕は英語の意図を汲みつつ、さらに日本語で駄洒落の要素まで加えて、ギャグが持つべきあうんの呼吸と瞬間の妙を作り上げていた。
そこで思った。おそらく字幕翻訳者の人も頭を悩ましたんだろうなぁ。いくらなんでも面白くないから、字幕だけでもなんとかしなきゃ、と。
2008年GW全国ロードショー
公式ウェブサイト:http://next-movie.gyao.jp/

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。