ビニール袋の虹
みんなは僕のこと「アホやぁ」と言う。
なぜかというと、テストの答案用紙が配られてもすぐにひっくり返し、
白いほう一面に絵を描いてそのまま提出するからだ。
当然、試験はいつも0点。
それは全然どうでもよくて、この間のテストより今日のほうが
どれだけ上手に描けたかが気になる。
だからみんな「アホやぁ」と言う。
みんなの母ちゃんたちは、僕と遊ぶと「アホがうつる」と
本気で思ってるみたいだけど、
ウチの母ちゃんはそんなことは言わない。
この間もそうだ。いきなり虹が空に大きくかかって、
それはもう絶対に追っかけなくちゃいけないから、
靴も履かずに家を飛び出ようとしたら、母ちゃんに呼び止められた。
「ほら、このビニール袋に虹を入れといで」
あのときの母ちゃんのセリフは、僕の今日までの人生で、
最高に気が利いたもののひとつだ。
でも、眉間に小さなしわを寄せたどこか困ったような笑顔は、
僕のそれまでの人生ではじめて見る母ちゃんの表情だった。
*******
これは、昨日インタビューした人が話してくれたものに、
少しだけアレンジを加えてみた、およそ実話です。
どれくらい「アホやぁ」かを効果的かつ具体的に説明するために、
かなりきわどい単語や表現を用いなきゃならないので、
ひとまず記事には不適当。ゆえにお蔵入り。
けれど、もったいなくてねぇ。
あんまりいい話なので、ここに書いちゃいました。
