古い家の兵隊さんの写真

幼かった頃の祖父母の古い家には、長押にご先祖様の写真が数枚かけてありました。
父方も母方も同じです。ちょっと前まではそういうしきたりでした。
あの写真が何だか怖くてね。記念に取った1枚から本人だけ抜き出し
拡大して遺影にしたんでしょう。写りの悪さが奇妙で、
無礼ではあるけどなるべく目を合わせないにようしてた。
そんな写真の中には兵隊さんもいました。他のご先祖様よりは確実に若く、
それは子供でも先の戦争で亡くなった人なんだとわかりました。
父の年長の兄弟や、母の親戚だと説明を受けました。
そうかと、そのときはその程度の感想しか持てません。
身内から出征する人が出て、行ったきり戻らず、今は写真に納まるだけという状況に、
終戦からおよそ30年後の少年にはどんなリアクションも思いつかなかった。
ただ、父や母というごく身近な存在が戦争とつながっているんだという事実は、
その兵隊さんの写真が教えてくれたことでした。
今もどこかの古い家ではご先祖様の写真が皆を見下ろしているんだろうか。
今日はお盆の中日。僕も母親の家に行きます。
甥や姪も来るけど、彼らにとっての古い家には兵隊さんの写真はないんだな。