電話

独り暮らしの母親に電話する。
「そっちのほうが雨風が強いんじゃないの?」と心配される。
藁の家に住んでいるわけじゃないから平気だという冗談は聞き流される。
「おかげさまで膝の痛みはだいぶ引いた」と言う。
それがここのところ最大の心配事だったのでホッとする。
「今日が私の誕生日だって知ってたんだ」
今日か明日か実は定かではなかったのでその問いには曖昧に返事する。
そしてやはり、いつも通り、こんなことを口にする。
「電話くれてありがとね。子供の声聞いてうれしくなるなんて歳だね」
なんて答えるべきかわからないこのセリフが僕は苦手だ。
次に電話しても同じことを言うに決まっている。
それでも僕は声を聞かねばならない。
親不孝への罪滅ぼしであれ、義務であれ、責任であれ、
僕は僕の声を聞かせねばならない。

それにしても昨晩は台風のようでしたよ。