年末タクシー

やっと話せる相手を見つけたのか、あるいはその日何度も同じ話を繰り返したのか、
それについては聞きませんでした。
でもとにかく、行き先を告げた直後からタクシー運転手さんのトークは全開でした。
「今日でこのクルマ、最後なんですよ。ちょうど10年ですね。なんだかんだ装備を整えて1500万円」
ふぇ~、タクシーってそんなにするんですか。
「ま、自営なんで好きなクルマにしちゃったんですけどね」
やっぱり毎日運転するとなると好きなクルマのほうがいいもんですか?
「そりゃそうです。なにしろV8エンジンですから。この加速、見てください」
(と言いながら深夜の空いた国道でスロットルも全開)
おお、いいですねぇ。この時代、もうV8なんてなかなか乗れませんね。
(って、スピード落として!)
「ええ。でも、燃費がねぇ」
じゃ次のクルマはハイブリッド?
「そうです。同じクラウンですけどね。深夜の住宅街を走るにはいいですよ。
何しろ静かだし。ガソリン代も月に10万円近く浮く計算です」
それならいいことずくめですね。
「ええ。でもねぇ、このクルマも惜しい気がしてんですけどねぇ」
このクルマはこの後どうなるんです?
「ガソリンのタクシー車は少し仕様を直して海外に売られます。
プロパンガス車は国内で廃棄です。エコじゃありませんね」
ちなみに何万キロほど走られました? 
「25万キロですね。いやいや、まだまだ乗れますよ。というかエンジン絶好調です」
とか話しているうちに僕の家に到着。
最後の日に乗れてよかったと言ったら、運転手さんは満面の笑みを浮かべていました。
深夜タクシー、僕には年末の風物詩です。

オオフチさんの『NYほかけ舟』更新。彼の地の冬もおかしなことになっているそうな。