タルト怪談

できるだけ要約してお伝えしますが、要するに怖い系の話です。
以前手土産で持っていった柑橘系のタルトがあまりに美味しかったから、
また食べたいと催促されました。うれしいじゃありませんか。
僕の見立てがよかったとも言えるわけですから。
洋菓子にはまったく疎いのですが、その手の土産は不思議と外しません。
勘で選んでいるだけなのに、みんな美味いと言ってくれる。気を遣わせてるだけか? 
それはさておき、前に行った店を再び訪れ、昨年末に食べたのと同じタルトってやつの
ホールってぇのを予約しに行ったら、まったく同じものは今つくっていない。
他の柑橘系なら用意できると言われました。その時点で僕のアンテナは「むむむ」と
小刻みに震えたんですが、でも似た類ならいいだろうと。
でもね、無念さと引き換えに自分の勘の正しさを知ることになりました。
決して不味かったのではなく、おそらくタルトとしては何ら遜色ないと思うんです。
けれど、前回味わった酸味と甘味の感動的なバランスはそこになかった。
勝手な期待を寄せたことは理解しています。店側にしても、常に新味を出そうと
努力されてるんだろうし、今回はたまたま僕らの期待とそぐわなかっただけでしょう。
一切の柑橘系がなく、他のタルトを注文していたら別の感想を抱いたかもしれない。
ただ、その1回で評価が変っちゃうんですよね。それが現実です。
一人の客を満足し続けるのは難しい。だから新しい客も増やさなければならない。
けれどその計算が、一人得て一人増えではなく、一人が二人と拡大していくのが
理想というか成功の、あるいは生き甲斐となるスタイルですよね。
一切れのタルトを見つめて、仕事って怖いなあと切実に思いました。