風に立つライオン

体内で沸き上がった感情は、表情や動作として体外に放出しないとストレスを溜め込む。
うれしいときには笑い悲しいときには泣く。特に泣けない悲しみは心を蝕みますね。
これから切り出す話はそんなに大層じゃないけれど。
さだまさしさんの小説『風に立つライオン』を読みました。
この物語は、さださんが1987年に発表した同名楽曲から生まれました。
僕の大好きな歌の一つです。小説は、内戦が激しかった80年代のアフリカで
現地医療に従事した日本人の医師に対して、彼と親しかった人物が手紙やメールや
インタビューを通じて独白するという、ユニークな形をとっています。
歌手が片手間に書いたものだと訝しがる方もいるでしょう。
それで読まず嫌いをするなら、非常に残念と申しておきます。
僻地医療、内戦。そして物語の最後の舞台となる2011年の被災地、
それぞれの悲惨さや難しさは克明に描かれているし、何より困難な状況でこそ
人は人でなければ希望を抱けない事実を突きつけてきます。
僕は3回、目頭をガツンと揺さぶられました。
その3回ともが電車の中で、いやまったく往生しました。思い切り泣きたかったなあ。
実を言うと3回目は、つつぅと小さな涙の粒が鼻筋をたどって落ちました。
花粉症ですからと言い訳したかった。
なぜ電車の中なんだ、なぜ泣けないストレスを与えたんだと、作者を憎んだくらいです。
まぁ完全な逆恨みですけどね。奇妙なスタイルでお届けする推薦文でした。

オオフチさんの『NYほかけ舟』更新。今日はタイムズスクエア・メモリー。