森に呼ばれるような読書

今でこそ文字を使う仕事をしていますが、子供の頃は本を読むのが苦手でした。
父親からはよく「本を読め」と叱られたけど、なんだかお勉強の延長みたいでね。
そんな自分でも本が読めるようになったのは、好きなものだけ読むようにしてからです。
そうしてお勉強とはまったく違う、楽しみの領域としての読書を獲得できた。
なので現在も、おもしろいと思えるものしか読まないし、
途中で「むむむ」と感じたらさっと閉じてしまいます。
そしてまた、「これはなかなか」といった本に出会えると、
日々の中で小さなガッツポーズをしたくなるのです。
宮下奈都さんの『羊と鋼の森』。本屋大賞を受賞したというニュースを知り、
普段は賞うんぬんで本を選んだりしないのだけど、今回はなぜか不思議と引きつけられ、
その日に買いました。結果から言うと、宮下さんが育てた森に呼ばれてよかったです。
ピアノの調律師を目指した青年の成長記。
僕はピアノが弾けないし、ましてや調律のことなどまるで知りませんが、
少しドライながらとめどなくあふれる音楽への賛辞が散りばめられていて、
音楽好きならきっと楽しめると思います。僕は楽しめました。
ふうっと心が温められる物語、ですね。
自分がいいと感じたらからといって他人にも読めなどと強制はしません。
それは子供の頃の僕がもっとも嫌ったことでもあるし。
でも、「今の自分はどうなんだろう」とささやかな疑念を抱いている人にはお勧めです。
しかし、最近はアタリの読書が多くてうれしいな。