しがない私

レンタルCD屋に行くと、新作だが準新作のコーナーで、それほど有名でも
大作でもなさそうなのに、なぜかいつも借りられない作品というのがあります。
ありませんか? 僕の場合は『靴職人と魔法のミシン』がそれでした。
ニューヨークの片隅の古臭い街で"しがない"靴の修理屋を営んできた主人公がある日、
店の地下にあった年代物のミシンを踏んでみると、邦題そのままに不思議なことが!? 
そして平凡だった毎日にとんでもない事件が!? 
主人公の父親役が意外なキャストだったり、オチもなかなかで、けっこう楽しめました。
そうした映画ならではの奇妙な体験というのは、
やはり"しがない"人に起こってこそ楽しめるものです。
じゃ、"しがない"ってどういう意味? 
伊坂幸太郎さんの小説『ガソリン生活』のかなり前半で、
兄弟が車中で"しがない"の意味について言葉を交わします。
同じ車中にいた女性はこう答えました。「つまらない」
取るに足らない。貧しい。みすぼらしい。そういう意味もあります。
ただし、小説内のその女性も「ずるい」と怒ったように、
他者に対して"しがない"という表現を用いるのはいささかアンフェアで失礼です。
つまり"しがない"と評することができるのは本人だけ。
そしておそらくこの言葉を使う人の意識は、謙遜や卑下が立っていると思うんですよね。
どう評価しても本当に"しがない"人は、自分の"しがなさ"に気付かないか、
あるいは目をつぶっているような気がします。
例によって映画の話から遠ざかってしまいました。何が言いたいかというと、
非現実的な体験がしがない人に起こってこそ共感できるのは、
僕もまた"しがない"からなのだろうと。謙遜かぁ? いやいや。

オオフチさんの『NYほかけ舟』更新。日本でのお買い物記録、です。