高級の罠

パスタに入ってるブナシメジや、鍋でよく煮えたシイタケや、
あるいはバターソテーにしたエリンギのほうが美味いんじゃないか、松茸より。
などと思っていたわけです。上質なソレを口にするまでは。
そうではない外国産には、よく耳にする芳醇な香りを感じたことがなかったんですね。
いや、わかってますよ。ただの庶民の僕に届く松茸がお手頃価格の類だったことは。
にしても松茸は松茸だろうと。高級ならそれ相応のパフォーマンスを見せてくれよと。
こういうこと、強いて言うなら高級の罠はそこら中に仕掛けられている気がします。
世間一般で高級とされる「上」の品でも、細分化して「上の下」と「中の上」に
どれほどの違いがあるかと言えば、確実な判別はできないんじゃないでしょうか。
であれば、そこそこの松茸よりエリンギを思いっ切り食べたほうが幸福かもしれない。
でもね、やはり高級と呼ばれるものにはそれ相応の理由があったのです。
「上の上」はやっぱり素晴らしい。
繰り返しますけど庶民の僕でも、一度くらいは突き抜けた最高ランクを知るべきです。
でなければ何かを語る資格はありません。
そんなわけで昨晩は、松茸を語る資格を得た日となりました。
『安穏 戊』でいただいた土瓶蒸し。旬の国産最後期の一品は、
一昨日までの僕の心を一回り膨らませるほどの豊かさを注いでくれました。
土瓶蒸しという調理法は松茸のために用意されたんですよね。それだけ特別なんだ。
突き抜けるって大事だなあ。
とまぁ、つまるところ、もうオレは高級の罠に引っかからないぜ、という自慢話です。