どこにでもあるような光景

日曜日の夕暮れ。いつものコーヒー屋の店先。線路脇に置かれた木のベンチに座り、
すするコーヒーカップから目を上げたら、一人のおじいさんがそこに。
しばらくすると、もはや薄暗い空に目を向けたまま喋り始めました。
「雨、降り続けましたかな」
その場には自分しかいなかったので、おじいさんに応じました。
いえ、さして降らなかったようです。
「天気予報とは違いましたね。何でも東京では20日以上雨がないそうですよ」
カラカラですね。今日はもっと降ってもよかったですね。
「そうですね。もっと降ってもよかった」
そう言った後そのおじいさんは、しばしの沈黙を呼び込みました。
上を見たままなので首が痛まないかと心配になったけれど、
気づけば僕もつられて灰色に陰る空に視線を向けていました。
おじいさんほどの期待感を天井に抱けず、すぐに目を落としたときには
おじいさんは歩き出し、コーヒー屋の2軒先の、
いつも人の出入りが少ない中華料理屋の中へ消えていきました。
きっと特別なメタファーなどない、どこにでもあるような他愛なき会話です。
でも、そんなふうに見知らぬ人とゆっくり言葉を交わすことが最近はなかったなあと。
もはや、どこにでもあるような光景ではないのかもしれない。どうなんだろう。

オオフチさんの『NYほかけ舟』更新。日本展示会の概要報告です。