Sully

今から8年前の2009年1月15日。ニューヨークのハドソン川に不時着水した
飛行機事故が起きたことを覚えていますか? 
機長の的確な判断と冷静な対応。そして付近にいた水上タクシーや観光船による
迅速な救助によって、乗員乗客155人全員が無事だったことから、
『ハドソン川の奇跡』と呼ばれた、まさしくミラクルな出来事です。
それを、ノンフィクションベースを得意とするクリント・イーストウッドが
監督した映画が、文字通り『ハドソン川の奇跡』。
でも、これは邦題。原題は『Sully』です。
名前っぽいですね。だとしても、「誰それ?」ですね。
この『Sully』は、事故機の機長だったチェズレイ・サレンバーガーという人物の
ニックネーム。川に浮かんだ旅客機の映像は覚えていたけれど、
僕は機長の名前までは知りませんでした。
そこで思ったわけです。映画のDVDを見終わって、
やっぱりこの作品の名称は『Sully』であるべきだと。
もちろん物語の中では事故の再現が見せ場になるのだけど、全体を貫いているのは
機長の苦悩です。マスコミからは英雄と称えられながら、事故調査の現場からは
他に手段がなかったのかと追い詰められる。
その辺の感情の丹念な描写は、緊迫した事故シーンより胸に迫るんですね。
だから邦題だと、物語世界が示すベクトルとは微妙かつ確実に異なるのです。
とは言え、サレンバーガー機長は引退後に自叙伝を執筆しており、
アメリカの内と外ではこの件に関する認知度がかなり違うだろうから、
いかにトム・ハンクス主演でも原題そのままじゃ日本で伝わり難かろうと、
その辺は理解できます。いろいろだよね。
なんてことを考えるのが僕の楽しみ方です。偏屈でへそ曲がりかもしれませんが。
しかしクリントさんはおもしろいですね。この映画撮影のために、
事故機と同メーカーのエアバス一機を購入したそうです。
90分ちょっとという短さもスリリング。よかったらぜひ。