春の歌

何かの気まぐれで植えられたような、
ただ1本の桜が歩道に寄り添うように枝を伸ばしていたりします。
花の半分は散り、半分は青い芽を出し、
そうなるともはや誰も見上げません。何となくわびしい気持ちになります。
夕暮れの駅に続く歩道。買い物にと出かけたら、
踏切を渡った先で10人ほどの女子高生の束に引っかかりました。
サックスのハードケースを背負った子がいたので、部活帰りかもしれません。
その歩道は傍らの道路の交通量が多めなのにひどく狭いので、
しばし彼女たちの歩みに合わせて後に連なりました。
やがて歌声。ひとりではなく何人か。聞き覚えはないけれど、
どうやら流行りの歌ではなく、合唱曲のようでした。
小声ながらわりと真剣に歌っていて、何となくいい光景だなあと。
もし反対側の歩道からその様子を写真に撮られたら、
僕の姿は奇妙に写ったかもしれないけれど。
日没間際でも20度。瞬く間に日々の気温は上がっていきますが、
春という季節は桜を境に浅くなっていくような気がします。
冬から交代するときの扉の重さだけがその役目なのかもしれません。
この1年、熊本の地震で大変な目に遭った人と何人か会いました。
その中には肉親を亡くされた方もいました。
距離にかまけがちですが、ご冥福を祈る気持ちは忘れないようにします。