添わず・沿わず・染まず

「意に添わない」「意に沿わない」「意に染まない」 

いずれも非常によく似た意味を持つ慣用句です。1番目と2番目に至っては

読み方が同じだから、どっちでもいいじゃないかと軽んじたいところですが、

微妙な使い分けが必要らしいです。

「意に添わない」は、気に入らないというような、説明がつかないけれど

生理的な嫌悪感が強い場合に適しています。

「意に沿わない」は、「添わない」より論理的な考えや意志に反しているケース。

「意に染まない」は、字感の柔らかさが示す通り、気乗りしない感じを示します。

他の二つにくらべると慣用性が低いので、もし誰かに

「あなたは私の意に染まない」と言われたら、「添わない」や「沿わない」より

はるかに深く落ち込みそうです。言霊の仕業ってやつかな。

村上春樹さんの『騎士団長殺し』の中で、「意に染まない」という慣用句が

比較的短い文脈で登場しました。それが今回の話題の出どころです。

村上さんには遠く及ばないけれど、文字を使う仕事をしている者として、

こうした字句メインテナンスは定期的に行わなければなりません。

とは言え無知を晒すことになるから、本当は黙っていたほうがいいのだろうけど。

度重なる失言で大臣の職を失った例の人物。

辞職の判断は意に添うもの、沿うもの、染まぬもの、さぁどれ? 

本人の答えはどうでもいいですね。

いずれにせよ僕らの意には圧倒的に添わず沿わず、同情の余地を残しそうな

染まずをあてがう人もまずいないと思われます。やれやれな話だ。