非専門

専門について「ふむ」と考え込むのは、僕の仕事を知った人から
「どんなものを書くんですか?」とたずねられたときです。
答えに窮するんですよね。わかりにくい答えしか用意できていないから。
特定のジャンルを言えたら相手を困らせないはずです。
映画とか音楽とかファションとかスポーツとか政治とか経済とか歴史とか
地下アイドルとか、ね。でも僕にはそうしたジャンルの特定がありません。
というか、フリーランスになった時点で特定を外しました。
その理由は、自分は専門を横断するものに興味があるのだと悟ったからです。
何だと思います? 人です。正確に言えば人が自らを語る言葉。
しかし、それを聞き出すにしても各ジャンルの専門知識が欠かせないはずと
心配になるかもしれません。それはその通りなんだけど、
専門を謳わない僕には専門機関による専門的な記事の依頼は舞い込みません。
幸いです。どんな場合であれお断りするのは申し訳ないですから。
それに何より非専門が前提だから、わからないことは何でも聞けばいいんです。
特定のジャンルを専門にする人々のほとんどはそのジャンルが大好きなので、
もう何でも気持ちよく教えてくれます。
その語り口に個性が潜んでいるんですよ。見逃せないし聞き逃せないでしょ。
そんなわけで本来であれば、「どんなものを書くか」と問われたら
「人です」と答えればいいわけです。でも、言えない。
その奥深さにおののく僕には専門を名乗る度胸がないから。
いい歳して修行中なんです。情けないでしょ。けれど一方では、
人についてわかり切りたいとも思っていないんですよね。おもしろいでしょ。