パン売りの少女

油断したのは、それが女声だったこと。しかも妙にかわいい感じの。
早起きした午前中の仕事を終えて帰宅。ソファで横になっているときに
ドアフォンが鳴りました。反射的に取ると、ちょっと早口で何か言ってる。
断ろうと思ったのだけど女の子なんですよね。しかもパンを売りに来たと言う。
パン? で、ドアを開けちゃった。そしたら本当に若い小柄な女性が
一人でパンの入った大きな箱を抱えて立っていたのです。
思わず「一軒ずつパンを売り歩いているの?」とたずねてしました。
僕の住まいからは少し離れた場所でオープンしたパン屋を
知ってもらうための営業だそうです。それにしても、ですよね。
いろんな訪問セールスがあるんだろうけどね。
健気に感じちゃうじゃないですか。おそらくそれも作戦の内だろうと思いつつ、
まぁ買っちゃいました。オススメ2種を。
いろんな仕事があります。そしてまたそれぞれに使命があります。
それを果たそうとする者には喜怒哀楽がつきまといます。
どんな職業も尊重したいと思いました。
でも、2個のパンの販売に成功した彼女は店のチラシを置いていかなかった。
だから僕にはそのパンをもう一度購入する手段がない。
それでいいのかどうかよくわからないけれど、ひとまず美味しかったです。
もしあの女性がこれを読んでくれたなら、もう一度訪ねてみてください。