"彼ら"のショー

水族館に行ってきました。期待を寄せたのはイルカショーです。
でも、中途半端にこまっしゃくれて成長した大人の感性は、
自然に沸く無邪気さを握りつぶそうとするんです。
イルカのショーとは要するに、異なる種同士の意思疎通という幻想の表現。
などと、それこそ大人ぶって物申すのも気が引けるけれど、
芸や技を披露するたび餌を与えられる"彼ら"の姿を見ていると、
それはやはり本能を利用された反射に過ぎず、たとえば"僕ら"が
「金のためではない」と自尊心やプライドという感情を源泉にして
行動を起こすのとは本質的に異なるのだと思わざるを得ません。
では、人間に飼いならされた"彼ら"は気の毒な生き物なのか? 
その問いに対する答えは出ません。
聞けば"彼ら"の多くは水族館で生まれ育ったそうです。ということは他の世界
つまり本来生息すべき海の暮らしを知らない"彼ら"に「今、幸せ?」と
たずねても、そもそも比較対象を持ち得ていないのだから答えようがないはず。
それ以前に"僕ら"は"彼ら"と通じ合う言語を知らないし、
ましてや幸福の概念すら共有できる術がない......。
のですが、決して広いとは言えないプールを備えた会場でひねりを加えながら
驚くべき跳躍を披露する"彼ら"を目の当たりにすると、
これはもしや本人も楽しんでるんじゃないかと思わされます。
生き生きしてるんですよね。餌目当てだけじゃない気さえしてくる。
そう感じること自体が"僕ら"の身勝手な幻想なのかもしれないけれど。
ただ、「これでどう? 楽しんでくれてる?」といわんばかりの躍動感にすべてを
奪われて、写真を撮るのを忘れてしまったのは事実です。