この先もこつこつと

「この家ね、鳥羽伏見の戦いで一度全焼してますわ」
延宝三年。西暦で言えば1675年に創業した造り酒屋の14代目当主は、
それがついこの間起きたことのようにさらっと言いました。
現住所は京都市伏見区の下鳥羽。まさに鳥羽伏見! 
鳥羽伏見の戦いとは、最後の将軍となった徳川慶喜が大政奉還で政権を
返上したことで生まれた新政府軍と旧幕府軍による幕末の国内紛争です。
教科書的記述ならあっという間のような出来事だけど260年以上も続いた
国政がいきなり変わったんじゃ数多くの大名は困惑しますよね。
で、新政府軍を倒すべく、街道を通じて京都の中央に進軍。その途中で交戦。
数日間は踏ん張るもあえなく敗退。旧幕府軍の兵士は1万5千人もいたのに
当時最新の武器を備えていた5千人の新政府軍に負けたのでした。
それが起きたのは、現在の暦に直すと1868年1月27日。
今から149年前なので、ついこの間というわけではないんですよね。
「床の間の鉄の塊。あれ、この家に飛んできた砲弾。
人が触り続けてきたせいか、ちっともサビずにピカピカなんですわ」
歴史的事件には事欠かない古都だということが頭でわかっていても、
床の間に家を吹っ飛ばした砲弾があるって、ねぇ。
そんな話をした後ではおこがましい限りですが、僕にも歴史があります。
今日で55歳。明治よりは長く、昭和よりも短い歳月ですが、
これまでにたった1日すら飛ばすことなく、
そしてまたこの先の日々もこつこつと生きていくのでしょう。