良い人のままで

2月4日から6日まで、東京・恵比寿で開催された『大日本市』に行ってきました。全国各地で素敵な製品をつくっている110のブランドが出展し、バイヤーなどのビジネスのプロと出会う機会をつくるのがイベントの主旨だそうです。
僕は例によって、110ブランドの中の1ブランドの取材で赴きました。こうした見本市は久しぶりだったので、予定より30分くらい早く会場入り。あちこち見て回りました。
できればいちいち足を止めて、あれこれ聞きたくなる性分なのだけど、取材時間に遅れるといけないので、ぐっと我慢。ブースの中に半歩だけ踏み込んだのは2軒のみ。ひとつは、日本に三基しかないという焙煎機を使っている愛知の製茶屋さん。試飲の麦茶が驚くほど香り豊かで爽やかでした。
もうひとつは、和歌山に本社があるという、たぶんブラシ屋さん。妙な毛束が目に入ったのでたずねたら、棕櫚(しゅろ)のキッチンブラシだそうな。表面加工をしているフライパンも痛めないことを自慢されておられました。
僕が取材したのは、奈良産のお箸。料亭やレストランで出される高級な使い捨て箸に、銘木として名高い吉野檜を用いた一品。料理の繊細な味わいを損なわないため、先端を直径2ミリまで削り詰めるという技が素晴らしかった。
そうしたこだわりの品を丁寧につくり上げる人たちは、おおむね控えめで、みんな良い人に見えます。その理由、いささか穿った見方になるけれど、どちらかと言えば商売が上手くないからみたいなんです。そもそも大量生産に向かない手仕事の製品ばかり。ゆえに大ヒットにつながり難く、その分を補う意味でも相応の単価設定を行わなければならない、といった事情があるようです。
それでも、手塩にかけた製品を知ってもらいたいし、使ってほしい。そんな思いを抱きながらもガツガツしていない(できない)人たちが集った会なんだと、僕は見受けました。
程よい塩梅ってどの辺なんでしょうね。一個人が犠牲を払って伝統工芸を守死するのは違うだろうし、かと言って、何かの拍子にめちゃくちゃ売れた末に品質が粗くなるのも残念。
良いものが良いと認められて適度に浸透して、つくり手が良い人のままでいられる社会になったらいいのにと、選挙前日だからじゃないけれど、そんなふうに思います。

こちら、奈良の『大門箸』。使い捨て前提でこの先端の細さって、ちょっとクレイジーだな。

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