ここでも何度か触れてきた、今住む町への愛慕。それがどれほどのものかを訴えるため、同じ町内での引っ越しを誇ってきました。住まいを変えるには相応の労力が必要。であれば心機一転、まったく別のところに移ったっていいはず。なのに、3+4の郵便番号がひとつも変わらない転居をする阿呆は滅多にいないだろうと。それだけこの町が気に入っていると、そういう自慢だったわけです。
ところが町内で飲んでいると、僕の優越感を静かに折る人がいくらでもいることに気づかされるのです。最初は、僕と同様に同じ町内で一度の転居を実施した方とお会いしました。このケースであれば、「やっぱり離れ難いですよね」という共感で爽やかに酔えます。
しかし、同じ町内で二度の転居をした人と遭遇すると、その方より低い自分の経験値を先に喋った愚かさに赤面して、妙な酔いが回ります。
言霊の仕業なのか、同一町内引っ越しの話題を持ち出すと、さらなる強者を呼び寄せるみたいです。ついには、三度の転居で四部屋に住んでいる方と出会いました。理由をたずねても、「まぁ、何となく」と神がかっている。そんな言葉を聞けば、グラスを置いて拝む他になくなります。
それ以上に敵わないのは、生まれてからずっとこの町で暮らしている人の存在です。僕が好きな町から一度も出たことがないなんて、圧倒的すぎるでしょ。そんな、いわゆるロコの方に「生まれはどこですか?」と逆質問されました。ほぼ記憶はないけれど新宿ですと答えたら、「うらやましい。このあたり、昔は畑だらけの田舎で、都心に憧れがあったんですよ」だって。
いやいや、本心じゃないでしょ。だって、ここからなら都心まで電車ですぐだから、いくらでも遊びに行けたでしょとツッコんだら、「まぁね」と返ってくる。本物の優越感に触れた思いがしました。
町への思いはそれぞれ。重要なのは、この町が多くの人に愛されているということ。できるだけ長く住みたいと考えています。けれど終の棲家にするには種々のハードルが高く、いつかは去る日が来るでしょう。そのときにもっとも越え難いのは、この町への愛慕かもしれません。

昼前のギュッとした顔がかわいいと思って。しかし朝顔って、10月でも咲くんだね。
