処分という言葉が痛い

『上野動物園クロヒョウ脱走事件』という、なかなかに興味深い見出しを発見しました。1936年7月25日早朝、文字通り上野動物園から推定年齢6歳のメスのクロヒョウが脱走。当時は府だったとは言え、首都東京に肉食獣が放たれたとなれば一大事です。すぐに警察や軍関係や猟友会などによる約700名の捜索隊が組織され、クロヒョウ捕獲作戦が実施されました。
ところが、事件はわりとすぐに解決。午後2時半頃、動物園に程近い美術館付近のマンホール内に潜んでいるところを発見。3時間かけて無事に保護されたそうな。クロヒョウにも人間にも被害はなし。
ただ、彼女が遠くに行かなかった(行けなかった)のは、7月の暑さによる食欲不振のせいだったと言われています。タイから贈られ日本に来たものの、当然のことながら狭い檻の暮らしはしんどかったのでしょう。園に来た人も、常に奥に隠れてしまうクロヒョウの姿はほとんど見られなかったらしい。
この脱走事件は、1943年に上野動物園から全国へ広がった、軍指導による『戦時猛獣処分』の遠因とされています。空襲で猛獣が逃げたら町がパニックになるという理由で。あるいはその実施は、国民の危機意識を高めるためでもあったとか。
処分という言葉が痛いですね。薬殺。銃殺。絞殺。刺殺。または餓死。戦後の1951年に出版された童話『かわいそうなぞう』は、ついに水まで与えられず死んでいったゾウたちの末路がベースになっているそうです。そうせざるを得なかった人たちも、相当に厳しい思いをしたでしょう。
そうした措置は、日本に限った話ではありませんでした。ならば戦争を止めればいいのに。それができないのが人間という種です。
僕が生まれる四半世紀前の事件に触れて、うろ覚えの記憶が立ち上がりました。何かの大会で来日した選手団を水族館に招待したときのニュースです。ある国の選手たちは、イルカのショーを見て、「動物にこんなことをさせるなんて」と憤慨したらしいんですね。そういう見方もあるんだと気付かされながら、日本人の僕は毎日イルカに触れている水族館の人たちが気の毒に感じられました。
この歳になるとさすがに足が遠のくけれど、人並に動物好きなので、今でも動物園や水族館に行けば相応に楽しめると思います。ゆえにそれらの施設を否定する立場にはいません。ただ、様々なことを知った上で、そこに暮らす動物や、そこで働く人々。そして訪れる多くの動物好きがいつまでも平和であればと思うだけです。そう言えば、上野には行っても動物園には何十年も訪れていないんだよな。

住まいのとなりの工事現場に、丁寧な仕上げの壁が。ご邸宅が建つのかな。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA