ちびくろサンボ

36年前の1988年12月12日は、岩波書店が『ちびくろサンボ』を絶版にした日なんだそうな。その日付までは知らなかったけれど、黒人への差別を理由にしたことは、今を生きていれば容易に察しがつきます。しかし経緯をたどっていくと、この絵本の主人公は必ずしも黒人ではなかったらしいんですね。
作者は、ヘレン・バンナーマンというスコットランド出身の女性。軍医のウィリアムさんと結婚し、インドへ移住。彼の地で29年間を過ごす中で4人の子供をもうけました。そのインド生活時代、ヘレンさんが我が子向けに手づくりした絵本が『The Story of Little Black Sambo』。主人公のサンボは、現地のタミル人の子供だったそうです。
ゆえに白人のヘレンさんにすれば有色の人だったわけだけど、そこに差別的な見方があったかはわかりません。彼女には絵本作家の才があり、他にも現地の子供が登場する作品を描いたらしいんですね。そのどれもが自分の子供向けの私的な物語であったなら、それこそサンボの見方は違ったものになったはずです。
さておき、知人の紹介で『The Story of Little Black Sambo』が英国で出版されたのは、ヘレンさん一家がインド滞在中の1899年でした。翌年にはアメリカでも出版。その際、主人公はアフリカ系黒人の少年に変わったらしい。それがこの作品の不幸だったかもしれません。ちなみに、岩波書店が日本語版の『ちびくろ・さんぼ』を発刊したのは1953年でした。
言うまでもなく差別は許し難い。けれど、誰のどんな基準を使って差別と判別するかも難しい。アメリカには『ちびくろサンボ』を愛読した黒人の子供たちが多かったと聞くと、何が正しいのかわからなくなります。子供時代にこの絵本に触れた僕ら世代も同様なんですよね。世の中の常識が変わるのは理解できるけれど、幼い頃の思い出が問題の対象にされると困惑しか残らなくなる。それを飲み込むのが大人だとしても。
2000年代に入り、国内のいくつかの出版社から復刊されたそうです。今読んでも、トラのバターがたまらなく美味しそうだといいのだけれど。

そう言えばミラーボールとはあまり縁のない人生だなと思いながら、見上げてた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA