当分オンボロのまま

我がオンボロ、1996年に国内で登録をして以来、たぶん14回目の車検から戻ってきました。自慢ですが新車で買ったときは、できれば長く乗りたいと考えました。けれど実際にこれほど長く乗れるとは思わず、そしてまた手続き上ではさらに2年も乗れるなんて嘘みたい。
「車検費用はお高いんでしょ」と聞かれたりしますが、あなたが想像するより安いはずです。それが叶っているのは、腕がいい上に親切なクルマ屋さんがいてくれるから。もし奇妙なクルマをお求めなら、クルマより先に頼りになる存在を見つけることを勧めます。
そのクルマ屋さんが代車として毎度貸し出してくれるのが、ゆで卵を想起させる白い軽自動車。これがまた、シフト操作不要のAT車でエアコンもパワーウィンドも装備されているから実に快適。何よりも匿名性の高さがうれしい。
これは決して自慢じゃないのだけど、目立ちたくないのに目立つらしいクルマに乗っていると、「あそこで見た」とか「前を走っていた」などと他意のない通報をされがちになるのです。そのたびドキッとするんですね。特に悪いことはしてなくても。だからたぶん、本意なき悪目立ちするクルマに疲れているところがあるのかもしれません。
それから、この軽自動車に乗ると“らしい運転”をしようとする態度変容が我ながらおもしろいです。たとえば片側3車線の高速道路では、パワーの低さに鑑みてもっとも左のレーンを走る謙虚さを貫くとか。パワーが乏しいのは自分のオンボロも同じなのに、なぜ軽自動車だと態度が変わるかと言えば、おそらく僕の中に立場的振舞いというような感覚が根付いているからだと思います。
それはよろしくない感覚と指摘されるかもしれません。けれど僕が話している意味合いは、スーツなど滅多に着ない服をまとうとそれに見合った振舞いをするというものです。で、そういう感覚を悟ると、実は見栄えなどが仕立てる概念的立場に支配されている愚かさを痛感することになるのです。そんな自分を反省する上で、ごく短期ながら2年に一度の代車生活は貴重な時間になるのかもしれません。
などと慎ましやかなことを考えても、車検帰りのオンボロに乗ると一瞬にして阿呆に逆戻り。誰にどう見られようと、または見られまいと、着慣れた服がいちばん楽ってことでしょうね。クラッチペダルが重いMT車で、クーラーとヒーターが別々に備わっていて、窓はハンドルをくるくる回して開閉する手動式でも、僕のクルマはまだ当分オンボロのままだと思います。

ありがとう、ゆで卵みたいな代車。また2年後に。

 

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