個人がそれぞれ抱える悩みは、他人にすれば「そんなことを気に病むの?」と不思議がられる場合もあって、そうなると誰にも理解されない孤独に苛まれたりします。
現時点で僕が抱えている悩みのひとつは、毎年このくらいの時期になると必ず襲われる、いわば季節性の問題です。エアコンの冷房をいつ起動させるか。あ、フンッて鼻で笑ったでしょ?
何でだろう、電気代がもったいないと思うからかな。もったいないという気持ちが沸くのは、この人生の半分はエアコンなしで暮らしてきた経験があるからなのかな。
それから、こんな気後れもあります。冷房使用時の室外機が吐き出す熱風。あの異様な高温を知ると、自分の小さな部屋を快適にするため町の環境を犠牲にしているんじゃないかと。これじゃ温暖化は防ぎようがないぞと、そんなことも思ったりするのです。
けれど最大の理由は、敗北感です。冷房を使うと、何かに負けた気がするんです。その負け方が優しいのもしびれるところ。リモコンのスイッチを入れるだけで起動するでしょ。「この程度の負けなんてどうでもいいじゃん」と悪魔が耳元でささやくようでもあるのです。
「僕はまだ冷房を使っていませんよ」
そんな声が聞こえてきたのは、ある店のカウンター。遠くのほうに座っていた体格の立派な方が、誰かと話しているのが漏れ響いてきました。
「一度使ったら切れなくなるじゃないですか。ヘタしたら10月まで。だから始まりはできるだけ遅らせたいんです」
心の中で膝を打ちましたね。その通り! あまりに快適だから、一度使い始めたら切りどころがわからなくなる。だから起動にためらうんだ!
同じ悩みを抱えている人がいること。そして、悩みに向き合う正しい姿勢を教えてもらえたこと。やっぱりこの国には、いたるところに神様がいるのかもしれません。あるいは、人は悩まずに生きられないから、いたるところに神様を探すのかもしれないけれど。
差し当たって今月いっぱいは、冷房なしで過ごします。あと1日とは言え、さすがに5月は敗北感が大きすぎる。

びわの実が生る時期みたいです。
