78歳のウルトラマン

幼き日のヒーローは、ウルトラマン。地底に潜んでいた怪獣や、地球征服を企む宇宙人が現れると、身を挺して僕らを守ってくれるのです。あるいは戦闘の場が都会となれば、ビルや高速道路をなぎ倒してでも。
もちろんウルトラマンは破壊者ではないので、人々が時間をかけて積み上げた建築物やインフラを敵もろとも壊すことなんて望んでいません。言うなれば、止む無し。その破滅ぶりが派手なほど、子供の頃の僕は感激していました。
けれど大人になるにつれ、3分経ったら空高く飛んでいく姿に、必ずしも「ありがとう!」と言えなくなっていきます。なぜなら、戦いの後始末の大変さが想像できるようになるからです。
「最初から光線なりビームを繰り出してくれたら被害も少なかったんじゃないかな」と、ため息交じりでウルトラマンを見上げる人が少なくなかったかもしれない、とか。場合によってはウルトラマンが倒したビルの下敷きになった民間人もいたはず、とか。いやまぁ、そんなことにいちいち関わっていたら勧善懲悪の物語は前に進まないし、何より憧れのヒーローなんて生まれないのだけど。
要するにリアルなヒーローとは、ある側面から見た限定的な救いの象徴に留まるものかもしれません。ゆえに異なる側面から見れば、放置や遺棄や裏切りの対象になる可能性も秘めている。だから思うのです。僕はウルトラマンにはなれないと。そもそも非力なただの人間というだけでなく、憎悪を向けられてでも何かを守り通す覚悟を持てそうにないから。
なんてことを、彼の国の大統領就任式を見て考えました。あらゆる敵を一撃で仕留めそうな言動の光線やビームを放ちながら、これから黄金時代がやってくるなんてセリフを吐けば、それはもう誰かのヒーローになること間違いなしでしょう。しかし、止む無しを繰り返すほどに後始末が大変になっていくとしたら、やがてどうなるのかしら。
いずれにしても彼の国の大統領はユニークな存在です。映画ではテロリストやエイリアンとの戦いに自ら臨んだりもするので、やはりタフさやヒロイズムが期待されるんでしょうね。何より78歳になってもウルトラマンになろうとするのだから、感服する他にありません。

時に僕の部屋まで揺らしていた近所の工事は、何だか一段落したみたいです。

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