人には様々な才能があるけれど、それを最大限引き出すのにもっとも重要なのは、ただ純粋に好きであり続けられる力です。そんな事実を再確認させてくれた本でした。
話題になったので、僕も手を伸ばしました。鈴木俊貴さんの『僕には鳥の言葉がわかる』
著者の鈴木さんは東京大学の准教授で、自らの研究で動物言語学という新しい学問を創設された方です。1983年生まれなので、今年42歳になられるようです。
動物言語学の創設に至ったのが、観察によって発見したシジュウカラの言葉。そう書けば、街中でも見かける全長15センチほどの鳥が言葉を使うなんてねぇ、と首を傾げたくなりますよね。そのあり得ないと思うことを、あり得ると思ってひたすら観察し、数多くの実験を試みて、一切の反論を封じる論文を学会に発表したのが鈴木さんです。
これも伝え方の問題で、研究の意気込みだけをすくい上げると、野心に満ちた尖った人物に感じさせてしまうかもしれません。そうではないことは、エッセイ仕立ての文体から朗らかに感じ取れます。
本書に潜む最大の求心力となるのは、シジュウカラには言葉があり、言葉を使って生活を営んでいるという新発見もさることながら、シジュウカラの生態を知りたい情熱です。それがもう呆れるほど伝わってくる。シジュウカラに顔が似てきたと言われてよろこぶなんて、最大賛辞で変態級という他にありません。
それから、森に分け入る長期間の調査をまったくいとわないのが凄いんですよね。鳥の鳴き声に意味があると気付いた学生時代、軽井沢での3か月間のフィールドワークは、残り1カ月を白米だけで凌いだらしいんです。町まで歩いて買い物に行く往復2時間が調査の邪魔になるからと。それをうれし気に書いている。
その後も繰り返し森に入るのですが、研究に不可避な行為だからか、後半では調査の身体的苦難に触れなくなります。しかし調査自体はいつでも、こっちの言葉はわからない小鳥相手だから、気の遠くなる忍耐が必要だと思うんですよね。
すべては「そんなことよりも」なのでしょう。純粋に好きになれる才能を持つ人だけが、誰も知り得なかった事実を世に知らしめていくわけです。心が震えます。

ベランダからシジュウカラ。キレイな声で喋ってたから。
