3回目の期待に満ちた文化的開店休業

カレンダー通りに働かれている方が多い気がしますが、それでも先週末あたりからはゴールデンウィークの香りが漂っています。こうなると僕は、ホームから人影が消えたにも関わらず、暖簾を下げない駅ソバみたいな開店休業状態に入ります。
開店休業って、要は実りなき結果なんですよね。ならば店を閉めればいいのだけれど、他が休んでいるならといった、微かな皮算用さえ捨てきれないのがフリーランサーの切ないところです。
それでも店番しながらできる文化的な作業があるだろうと考え、今週に入ってから映画を観るようにしました。題して『クリストファー・ノーラン祭り』。まあ、過去作を1日1本振り返っただけですけれど。
『インターステラー』『テネット』『インセプション』。これは観た順番。公開年次で並べると『2010年/インセプション』『2014年/インターステラー』『2020年/テネット』になります。いずれも難解さが評判で、僕も初回は完全に振り回されました。
何が難しいかというと、物語のルールが極めて複雑なんですね。『インターステラー』は相対性理論を知らないと納得できないみたいだし、『テネット』は時間の順行と逆行の入れ替わりに頭がついていかず、『インセプション』も人が見る夢のどこを捉えているのか迷わされるわけです。それゆえクリストファー・ノーラン作品は、「2回目がおもしろい!」という映画評が定番になっているみたい。僕は2回目でも「どこ? どっち?」となりましたが。
しかし、初見では理解しきれない難解さに辟易させないのが、この監督の素晴らしいところです。あくまで僕の見解ですが、ノーランさんが常に描こうとするのは、強烈な試練を乗り越えようとする人の魂だと思うんですね。そんな普遍的テーマの重要性を、手の込んだ物語装置を変えながら伝えようとしている。その根幹は1回見ただけでものぞけるから、最後まで飽きずに鑑賞できるわけです。取り扱うべき試練がSFだけに留まらないことは、伝記映画となった最新作の『オッペンハイマー』でも明らか。無理難題を主人公に押し付ける点では、稀代の意地悪監督と言っていいかもしれません。
これ以上は感想を述べませんが、3作連続鑑賞で驚いたのは、どれも決して古くなっていないこと。『インセプション』と『テネット』には10年のブランクがあるのですが、年次を無視して観ても、または2度目でも新しさを感じました。とてもよかったです。間違いなく3回目でもおもしろいという期待を抱かせてくれた、文化的な3日間になったから。

綿毛を飛ばして種を根付かせる方法、タンポポがいつ悟ったのか、誰か教えてほしい。

 

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