半年前の冬至に続き、今年もまた無事に夏至がやってきてよろこんでおります。そんな僕にある男が、「明日は夏至ですね」と言ってきました。おおっと感心して、「実はオレ、夏至と冬至が好きなんだ」と打ち明けると、「じゃ、春分と秋分はどうですか? それも1年の大きな区切りでしょ」と問い質してくるじゃありませんか。こうなると、半ばムキになって言い返さざるを得なくなります。
「いずれも昼と夜のバランスをわかりやすく示すことで、あれこれ忙しない地上に律儀で健気な星の巡りを伝えてくれるわけだけど、昼と夜の長さがそろう春分と秋分より、昼と夜の長さがそれぞれピークを迎える夏至と冬至のほうが、劇的なぶんだけ切なさを感じる」
これに対する返事は「へぇ」でした。長いだけの説明に向けた対応としては予想通りだし、妥当です。これでこの会話は終わると思いきや、「僕も夏至が好きなんですよ」と乗っかってきた。「1年で一番昼間が長いから、もっともっと遊べる気がしちゃうんですよね」だって。そんな無邪気な心持ちで夏至をよろこぶ人間もいるんですね。
これは夏至好きとして重要な史実ですが、旧暦の天正十年六月二日、現在の暦で1582年6月21日は、本能寺の変が起きた日。夏至は年によって日付が変わりますが、1582年の夏至は今年と同じ21日だったそうです。なんて話を持ち出しても、「だから?」「それで?」と言い返されるのがオチでしょう。
その上でロマンティックなことを語れば、天下統一の実現が目の前まで迫っていた織田信長は、1年でもっとも昼が長い、つまりは輝きに満ちた日を見届けることができなかったわけです。
ちなみに1582年の日本は、オーロラや彗星が現れたり、本能寺の変の前日には日食になったりと、珍しい天体がたくさん確認できた年だったらしいんですね。しかし信長は、空の変化で自分の野望を曲げるような殊勝な男ではなかった。そこで明智光秀が、「そうやって星の巡りを考えないからこうなる!」と、皮肉な隠喩を込めて夏至の日に信長を襲ったのだとしたら?
これも返事は「へぇ」でかまいません。どうでもいい夢想ができるほど、夏至に関しては僕が誰より無邪気でしょうから。

1年でもっとも陰影が濃くなる日、ではないか。
