今年公開の映画がもう自宅で鑑賞できる時代に感謝しながら、『サンセット・サンライズ』を観ました。「泣き笑い移住エンターテインメント」が公式のキャッチコピーみたいです。
移住してくるのは、菅田将暉さん演じる東京の若いサラリーマン。住む場所を変えるのは、コロナ禍によるロックダウンで、通い慣れた都会のオフィスじゃなくても仕事ができるようになったから。僕が興味を持ったのは、僕らが等しく体験したあの時期を、この時点でどう描くかでした。2011年の3.11も同様だったのだけど、社会全体に大きな影響を及ぼした出来事をエンターテインメントの世界がどう扱うかは、僕がそれ自体に向けた考えをまとめる手掛かりになるのです。
そんな関心だけをもとに、事前情報も集めないまま観始めたら、物語はコロナに留まらず、様々な問題を拾い上げていました。何よりも若いサラリーマンの移住先は、震災で一変した三陸の港町。なおかつ田舎ゆえ、今に始まったものではない過疎化や空き家問題を抱えているわけです。
そこに破格の家賃に惹かれた、いかにも都会的能天気な若者がやってくる。しかも若者に空き家を貸したのは、井上真央さん演じる、村の独身男たちが憧れる未亡人。そりゃもう田舎は大騒ぎって流れになるのですが、移住したサラリーマンが何かを解決するわけではありません。というより、ほぼ何もできないまま、ある意味では様々な事情に流されていく……。
これ以上はネタバレになるので控えますが、結局のところ、抗い切れない自然災害や感染症の拡大には流さる他になく、けれど皆と同じ条件や状況の中にも、それこそ日の出と日の入りを繰り返す個々の物語は必ずあると、そんなことを考えさせられました。
それは偽りなき感想なのだけど、「そう言えばコロナ禍って」とリアルに思い出させてくれたのは、未亡人が初めてマスクを取るシーンだったんですよね。いやもちろん、真に覆われているのは家族を亡くした女性の心ではあるんだけれど、その顔が井上真央さんなら、そりゃ初見の若者が見とれるのも無理ないわ。そういう不謹慎ぎりぎりの感情が、ちょっと懐かしかったです。男性目線の傲慢と指摘されたら返す言葉もありませんが。
ほのぼのとした関係性を見せているようで、実は個々の諦観がベースにあることを知らしめるナイスな作品でした。よかったらぜひ。

ツリガネカズラという花らしい。漢字だと釣鐘葛。
