ある美容系会社の採用に関する話です。僕とは縁遠い業界ですが、それはさておき。
母娘2代に渡る顧客なんだそうな。で、娘がその仕事に憧れて、件の会社への就職を希望したらしい。いい話ですよね。部外者ながら、そういう縁は大事にしたらいいと思ったりもします。
「でも、デブなんですよ」
これは、長年の付き合いがある僕だから口にしたであろう、採用担当の言葉。近頃よく耳にするルッキズムなどまるで気にしない言いっぷりが、むしろ爽快でした。それでも憧れを抱いて来てくれるのだから、何とかならないものか聞いてみたんですね。
「いやまぁ、スタッフ全員がイケてなくてもいいんですけれど、美を提供する職種だから、さすがにデブは。ひとまず採用することにはなったんですが、どの店も彼女を欲しがらなくて困っているんです」
とは言え、体型に遺伝的な要素があったとしても、本人の努力に期待は持てないだろうか? などと気づけば、僕は会ったこともないその子をかばう側に回っていました。ですが、採用担当の一言が僕らの会話の終止符となりました。
「お母さんもデブなんですよ」
ずいぶん前、『人は見た目が9割』という本がヒットしました。その、見た目が人間の関係性に影響する『9割』は、1960年代の研究成果で実証されているらしいのです。
アメリカ出身の心理学者であるアルバート・メラビアン教授は、感情を伝達する際の各要素の重要性を「言語7% 聴覚38% 視覚55%」と提唱しました。
この数値が意味するのは、人は非言語的要素の聴覚と視覚を合わせた93%で、他者に対する感情が動くということです。端的に言えば、喋っている内容より、話す声や見た目でどんな人間か判断している。ゆえにルッキズムは、そうした研究成果があるのを承知した上で、内面に直結する言語的要素の尊重を指摘したのでしょう。そこを見落とせば差別が広がるだけだから。
しかし僕らの会話に終止符を打った採用担当の困惑も、わかる気がします。こういうときの逃げ口上は、「それは難しい問題」になりがちですね。僕はできれば、その娘が意気揚々と働く姿を見たいけれど、どうなるんだろう。

勝負事の縁起は赤。てなわけで試合へ。
