2017年の今日は、東洋大学の学生だった桐生祥秀さんが男子100mで9秒98を記録した日。陸上競技に疎い僕でも、10秒の壁を破った初の日本人選手の登場に、「日本人もここまで来たのか」と興奮したのをよく覚えています。
他方、記録更新には奇妙な傾向があるらしいんですね。桐生選手が10秒を切った2017年の翌々2019年には、サニブラウン・アブデルハキーム選手が9秒97を。さらに翌々2021年には、現時点で日本記録の9秒95を山縣亮太選手が出しています。
桐生選手が10秒の壁を切る前の日本人最速記録は、1998年に伊東浩司さんがマークした10秒00。大仰な言い回しをすれば、日本人は19年かけて100分の2秒を縮めたことになるわけです。ところが一度10秒台に入ると、4年で100分の3秒も縮まった。となれば、まだまだ日本人はいけるんじゃないかと期待したくなるのが素人の人情ってやつです。
しかし世界を見渡せば、という現実を知らないわけではありません。ウサイン・ボルトの9秒58はさておき、今や男子100mは9秒台を出しても予選落ちしかねない領域に入っているらしいじゃないですか。
話はいきなり世界バレーに飛びますが、女子日本代表は3位決定戦に敗れてしまいました。それまでも非常に頑張っていたんです。ただ、他国との平均身長差は如何ともし難く見えました。女子日本代表のそれは、僕と変わらない約175㎝。ところが他国は10㎝くらい高い上に体格もいいから、パワーが異なる。そうした人種的フィジカルによるハンデは、それこそ10秒の壁と同様、日本人の前に立ちはだかり続けています。
それでも世界と戦うなら、様々な工夫をしなければならない。そのために払ったであろう多大な労力から生まれる躍動は、僕ら日本人が応援せずにはいられない日本人選手の中に見出さなければならないと思うのです。やっぱり届かないとか、無気力な諦めをせずに。
話は再び100m走に戻ります。うれしかったのは、今週末から始まる『東京2025世界陸上』の日本男子100m代表に桐生選手が選ばれていることでした。10秒を切ってから8年。まるで諦めてないのが、すでに物語としてカッコいいのです。

不気味なほど大きく強い光を放っていた月。皆既月食の予兆にふさわしかった。
