本の話はなかなか難しい

原稿を書く仕事をしているせいか、本の話題を振ってくれる方がいます。たとえば「最近、何を読みましたか?」とか。この手の質問には毎度窮します。
なぜなら、文章書きに携わっている人間が必ずしも読書家ではないから。同業者の方々がどうかは知りませんが、僕は人に誇れるほどの読書をしてこなかったタイプです。なので、近所の飲食店情報をさらっと伝えるように、「これがおもしろかったですよ」と気の利いた返事ができません。
加えて、仮に最近読んだ本があったとしても、作品名を挙げるのは恥ずかしかったりもするのです。たくさんの本を読み漁っている人に、「それ?」とか首を傾げられたら、読書家の自負が持てない自負がさらに強くなるだけだし。
なので、「何を読みましたか?」系の質問を振られると、しばし口ごもってしまうんですね。そんな僕の態度は、業を煮やすのに最適な状態なのかもしれません。たずねた相手は、勿体つけたようにというか、満を持してというか、バッグの中から「実は今日、こんなの買ったんです」とまっさらの本を取り出すわけです。そこでようやく気付きます。オレの返事などどうでもよく、ただ自慢話をしたかっただけなのかと。
いやまぁ、その人が相手を選んで本の話題を振るのだとしたら、有難いことだと思わなければなりませんね。その感謝として、僕が伝えた最近の読書傾向は、本棚に収めてある本の再読でした。
2年前の引っ越し未遂で蔵書の半分を始末したものの、残り半分も一度しか読んでいない本ばかり。結局のところ僕の読書は、一度の完読で満足してしまう浅いものなのでしょう。本に限らずあらゆる作品は、繰り返し触れることで再発見があったり、深みが増すのは多くの方が体験されていると思います。ならば自分もと、ここのところは書店に行かず、自宅の本棚を物色するようになりました。現在は、いしいしんじさんの再読にハマっています。
というような僕の近況は、件の質問者にはかいつまんで話しました。詳細を好んでもらえるとは思えなかったし、あるいは実際は、彼の読書習慣を深掘りするべきだったかもしれないから。いずれにしても、妙な期待をされかねない職業柄、少なくとも僕にとって本の話はなかなか難しいです。あまり振らないでいただけると助かります。

これまたランニングコース中の、廃棄物と思っていた椅子。ラッピングが変わったのはなぜ?

 

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