さっきすれ違ったチャリンコ少年から

「蓋を開けてみればやっぱり」が、今年の箱根駅伝の一般的な感想かもしれません。あるいは、「それでも実は」といった部分を明かす裏話や秘話が出そろえば、「そりゃ強いはずだ」とわかった風を装えるでしょう。けれど本当は、まるでわからないことばかりだと思ったんです。
たとえば、青山学院大で5区を担当した4年生の黒田朝日さん。その走りは、自ら「シン・山の神」を宣言するにふさわしい驚異的なものだったけれど、青学が箱根駅伝で初の総合優勝を果たした2015年1月の彼は11歳でした。
同年から4年連続優勝を遂げる過程で、駅伝における青学の知名度は一気に上がっていきます。が、少なくとも初優勝した年に早生まれの小学6年生が、その年の駅伝中継を観ていただろうか? いや、黒田さんのお父さんは学生時代に3度の箱根出場経験を持っているそうだから、お正月は家族で日テレに釘付けだったかもしれません。ですが黒田少年は、中学に上がるとバスケットボール部に入るのです。陸上競技を始めるのは高校生になってから。
何が言いたいかというと、彼は青学が初優勝したとき、後の自分が「シン・山の神」を宣言する姿を想像できたかどうか。これは、直接聞いてみれば答えが判明する、今はわからないだけの疑問でしょう。それよりもまるでわからないのは、いつしか有名になる子供の現在の所在です。
「そんなの、わかるはずがねぇよ」という話かもしれません。でも、こう考えるとワクワクしませんか? それは僕の知り合いの子供かもしれないし、またはあなたの家族の中にいるかもしれない。その子たちが周囲に気づかれないまま、今回の駅伝に触発されて「シン・山の神」を超えたいと思ったかもしれない。何しろ生きてさえいれば、あらゆる可能性は無限大だから。
実のところ人生は、わからない偶然とわかった必然を繰り返しながら一篇の物語を編み続けるものなんですよね。なんて大仰なことまで考えたのは、さっきすれ違った、チャリンコを猛然と漕いでいた少年が「そうかもしれない」と勝手に想像したからです。何年か後に「そうだ」と実証できる確率は極めて低くても、「そうだった」ならかなり楽しいことになるなあと思って。

こちらは先週末の渋谷のライブハウス前。今年は正月から、順番をちゃんと待つ日本人の律義さに感心し通し。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA