「チャットGPT、使ってます?」
3か月半ぶりの髪切り。いつもの店長が、いつも通りざっくりと会話を始めました。前にも話しましたが、AI方面は僕の仕事領域を脅かそうと日々躍進しているので、自分から触れたい話題ではありません。しかし、彼女が僕の今後を心配してくれているなら、正直に答える他にありません。
それを使うようになったら、オレは敗北を認めることになる。ただ、聞いたところによると、AIに書かせた後で添削するという同業者がいるらしい。これが僕の返答。
「へぇ」
そういう気のなさそうな返答になるのは想定内。何しろ施術中だし。
「でも、某テレビ局のお客さんが言ってました。若者にはチャットGPTを使えと勧めてるって。資料が出来上がるスピードが格段に速くなるからと」
確かに、定型文の作成には便利なのかもしれない。定型文の依頼がないから知らないけれど。
「なるほど。私たちの場合、ごく稀にクレームに対する謝罪文を書かなきゃいけないときがあるんですけれど、こっちが悪いと認められず、一方的に文句を言われたなら、チャットGPTに任せたいですよね。びっくりするほど丁寧に謝ってくれるから」
じゃ、こっちが悪いと認めた上で誠意を示すとしたら?
「それはもう、自分の頭で文章をひねり出します」
だからきっと、AIに頼る分岐点は生身の感情を表現したいかどうか、ってことだと思うよ。
「うわ、そういうことか!」
何だか一方的に納得した彼女の話は、ここで終わりませんでした。
「AIが進化するとなくなる職業とか話題になるじゃないですか。そうなっていく時代に向けて、自分の子供たちがどんな仕事に就けるか、すごく考えちゃうんです」
なるほど。僕は物書き稼業がこの世から必要とされなくなる前に逃げ切ろうと思っているけれど、二人の男の子を育てる母親にはそういう不安があるんだね。何も解決できないだろうけれど、僕なりの持論を述べてみました。
まずは、子供が身に着けておくべき基礎体力をしっかり養う。その場として、仲間とのコミュケーションが不可欠な団体競技を選ぶ。
「私もそう思います! 友達をつくれるいいヤツなら、どこでも生きていけそうだから」
そして、手に職。たとえば美容師。個人の技術と経験は、これまで以上に重要になっていくはず。
「それがアメリカあたりでは、全自動で髪を整えるAIマシンが出たらしいんですよ。私それ、フェイクニュースだと思ってるんですけど」
そんなところにもAIかと溜息。けれど、誠意を示す態度を何千万通りも知っているAIではなく、子供の未来を案じながら手を動かす人に髪を切ってほしいというのが、今後も揺るがぬ僕の本心です。

新芽の色づきを楽しむ植物もあるのね。ベニカナメモチという名前らしい。
