日付だけで出来事の概要が伝わる件は、僕のライフタイムでは9.11が最初でした。もう20年になるというのに、発表されている世界貿易センタービルの犠牲者2753人のうち、いまだ1106人の身元が特定できていないそうです。その事実によって今も心を痛め続けている家族や友人は、1106の何倍になるのでしょうか。
あの日のことはよく覚えています。創刊したばかりの専門誌の編集部で次号の制作に追われていた午後10時前後、誰かが叫んだのでした。「戦争が始まる」と。PCでネット速報を見ていたんじゃないでしょうか。編集者というのは夜も深まっていくと意味不明なことを口走る人種なので、その瞬間は目もくれませんでした。何しろ戦争になりかけているのは自分の机の上だったし。
「いいから見ろ」と強引に呼ばれて画像を見て、でも何が起きたのかよくわからなくて、その後別の誰かがテレビを付けてライブ中継に釘付けになってからは、確かに戦争が起きるかもしれないと空恐ろしい気分になりました。雑誌なんかつくっている場合じゃないのかもと思ったんですね。けれど同時に、自分に影響が出るにはかなり時間のかかる遠い国の話だとも感じていました。
それからしばらくすると、友人の知人くらいの方があの日あのビルの中にいたという情報が伝わってきます。会ったことはない人でしたが、もはや海外の都市部は僕くらいでもそのくらいの距離感でつながっているんだと、これはこれで背筋が寒くなりました。
事件から2年後の2003年10月、仕事の流れでニューヨークに行きました。せっかくだからグラウンド・ゼロも見ておこうと、確か徒歩でその場所に向かったのだけど、テレビで見た巨大なビルが2棟も並んで建っていたとは信じ難いほど、その敷地は狭く感じられました。周囲の路地も同様に。在ったものが無くなっている状況から何をどう感じ取ればいいかわかりませんでした。でも、実際にそれが起きた場所に立って、映像の記憶を重ねてみて、何かが少しだけ飲み込めたような気持ちになりました。
場所も時間も離れていると、事実の了解が困難になります。だからこそ、想像するしかないのでしょうね。今も帰ってこない大事な人を待ち続けている人々の思いを。胸の苦しさが和らぐ日が少しでも早く訪れることを祈ります。

紅葉の始まり?
