僕が子供の頃に読んだマンガでも、大人になってから観たSF映画でも、未来都市では空飛ぶクルマが走り回っていました。走り回っていた? 飛び回っていたが正しいのか? いずれにせよ空飛ぶクルマは、理想の未来像にとって必要不可欠なアイテムだったでしょう。
先月の初旬に閉幕した『JAPAN MOBILITY SHOW 2023』でも、数多くの空飛ぶクルマが出品されたそうです。そのほとんどは複数のプロペラで飛ぶ有人ドローン型で、車輪は備えていません。となると、僕の知っているクルマではないのです。エアモビリティと呼ぶのかな。それら別物の展示が増えたから、従来の東京モーターショーから名称を改めたわけだ。
少し前、万博を引き合いにして自分の未来観を話しましたが、すべてが今日よりよくなると信じられた未来像の中で、空飛ぶクルマにだけはあまり興味が及びませんでした。理由はシンプルです。子供の頃から高所恐怖症だったから。僕にとって高いところは、「落ちたら死ぬ」という怖さに全身が支配される場所です。それゆえ今でも足を踏み入れたくないし、クルマであるなら地面にタイヤをつけていてほしいと思うのです。
何しろクルマは、海や河川を跨ぐ橋の上や切り立った崖を縫う山道などではない限り、落下の危険性は極めて低い。仮に追突事故が起きても、あるいは機械的トラブルでエンジンが止まっても、ひとまず地上に留まれる。じゃ、空飛ぶクルマは? そんなことを考えたら乗れないんですよね。
しかし、個人的な事情にお構いなく未来はやってくるのでしょう。相応のインフラとルールを整え、かつてクルマだったものが空を飛ぶ明日。それが叶えば、駐車場は建物の最上階に設けられるんだろうね。そこからすっと街に出る。その行為自体が僕には無理っぽいのですが、地を行くクルマでも開発が進められている自動運転は、空を飛ぶほうが実現に近いかもしれません。ならば膝の悪い母親が僕の部屋まで一人で来ることもできるのか……。
果たして空飛ぶクルマの一般実用化は、または旧来のクルマの自動運転化はいつか?
話は少し逸れますが、首都高速の環状線が地下化され、日本橋の上に空が広がるのは2040年だそうです。そういうニュースを耳にするたび、自分の未来観が変わる実感を覚えます。何しろ17年後なので、まずは「この世に留まっていられるか?」という疑問が頭に浮かんでしまうようになりました。未来から除外されていく現実に迫られると、どんなにビビっても空飛ぶクルマを体験しておきたい意地も芽生えてきますね。老害と言われないよう、できるだけ我を張らないようにはしたいですが。

ガソリンスタンド撤去工事。穴を掘ったり池をつくったりしながら粛々と進行中。
